日本への対抗心あらわ 中国の「時速600キロのリニア」開発ぶち上げに見える焦り

 
上海郊外と浦東国際空港を結ぶ磁気浮上式のリニアモーターカー

 中国が国家プロジェクトとして、独自技術による最高時速600キロのリニアモーターカーの開発をぶち上げた。2020年に試験車両を完成させ、将来的に北京-上海の約1100キロを2時間で結ぶリニア線の建設を目指すという。日本のJR東海のリニアに匹敵するスピード。中国ではすでに上海で最高時速431キロのリニアが営業運行しているが、これはドイツの技術を導入したもの。独自技術では最高時速100キロの中低速リニアが今年5月から試験営業運行を始めた。中国は一気に国産リニアのグレードアップを図り、インフラ輸出などで日本に対抗する。

 中国メディアの報道などによると、中国の鉄道車両最大手、中国中車が10月21日、「国家重点研究開発計画事業」として、独自技術による最高時速600キロのリニアの開発に着手したと発表した。同社は、同じ国家事業として国際路線で走らせる時速400キロの高速鉄道車両の開発も並行して進める。

 リニア開発では、まず距離5キロ以上の実験線を建設。2020年6月までに試験車両を完成させ、21年以降に量産を含む実用化を目指すとしている。

 同社関係者は中国メディアに「磁気浮上、推進、制御の核心技術について、自主開発する」と強調。さらに、「従来の高速鉄道は最高時速400キロでの運行が限界。日本は600キロ超のリニアを開発しており、次代の交通システムとしてリニアの技術を確立することが不可欠」と述べ、日本への対抗心をあらわにした。

 北京-上海を結ぶ高速鉄道の所要時間は約5時間だが、600キロのリニア線が実現すれば、約2時間に短縮できる。

 一方、最高時速400キロの国際路線向け車両は、気温マイナス40~50度の環境で走行でき、国によって異なるレール幅や電圧、信号技術にも対応できるようにする。中国が推し進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」で重要な柱となっている国境をまたぐ高速鉄道路線を走る車両を想定しているとみられる。

 中国は、国内で高速鉄道網の整備を急ピッチで進める一方、海外での鉄道建設と車両の輸出を国家戦略と位置づけている。リニアでも、先行する日本とドイツに追いつき、新たなインフラ輸出の武器としたい思惑が浮かぶ。

 ちなみに対抗心を燃やす日本のリニアは、JR東海が昨年、山梨リニア実験線で時速603キロの有人走行に成功。2027年にまず東京-名古屋で開業を目指すリニア中央新幹線は、最高時速505キロで営業運転し最短約40分で結ぶ。

 中国では、2002年に上海浦東国際空港と上海郊外を結ぶ約30キロのリニア線「上海トランスラピッド」が開業した。ドイツで開発されたトランスピッド方式を導入。営業最高時速は431キロで、所要時間は7~8分。

 独自技術による国産リニアは、湖南省長沙市で全長約18キロの「長沙中低速リニア線」が今年5月から試験営業運転を行っている。営業最高時速は100キロ。車両の設計から製造、建設、運行管理まですべて自前で手がけたという。

 開発に携わった研究者は、中国メディアに、「われわれはリニアの基幹技術を手にした」と語っている。

 ただ、ドイツから技術移転したトランスピッド方式は、通常の電磁石を用いるもので、磁力が弱く浮力も1センチ弱にとどまるため、現在の430キロから大幅なスピードアップは困難とされる。振動も激しく、乗り心地は良くない。既存の高速鉄道と大差がないことから、中国以外で採用されることはなく、ドイツでは2011年に開発を終了した。

 これに対し、JR東海のリニアは、超電導電磁石を用いた超電導方式。ニオブ・チタン合金を液体ヘリウムでマイナス269度まで冷却し、電気抵抗がゼロになる超伝導状態を作り出し、強力な磁力で車体を10センチも浮き上がらせ、時速600キロ超を達成した。

 中国がどのような独自技術で時速600キロを目指すのかは不明だが、超電導の制御には高度な技術の蓄積が必要で、そう簡単には日本に追い付けない。

 日本と中国は高速鉄道のインフラ輸出で激しくしのぎを削っている。中国は破格の条件を提示し、米国やタイ、メキシコ、ベネズエラなどで次々に受注を獲得し、昨年はインドネシアで日本の新幹線に競り勝った。一方で、今年6月にラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道建設で、米国が中国との合弁を解消。メキシコやベネズエラの計画は頓挫し、インドネシアでも停滞するなど、逆風にさらされている。2011年に浙江省で起きた40人の死者を出す衝突脱線事故のダメージも大きく、安全性を不安視する声はなお大きい。

 これに対し、日本は米国のワシントンとニューヨークを結ぶ路線に超電動リニアを売り込むなど巻き返しを図っている。

 中国が国家プロジェクトとして600キロリニアの開発をぶち上げたのは、高速鉄道の輸出が相次いで行き詰まっていることへの焦りの表れともいえそうだ。