中国ステルス戦闘機「殲20」は駄作機かそれとも傑作機か お披露目はたったの1分間

 

 中国の広東省珠海市で開幕した航空ショー「国際航空宇宙博覧会」で、中国が開発を進めている次世代ステルス戦闘機「殲20(J20)」が一般に初めて公開された。ステルス戦闘機は、米空軍が第5世代のF22戦闘機を実戦配備済みだが、J20はF22と渡り合えることができるほどの性能なのか。

中国報道官は「計画通りに開発が進行中」と説明

 2機のJ20によるデモンストレーション飛行は中国空軍のアクロバットチームによって11月1日に行われた。1機はすぐに会場の上空を飛び去ったが、もう1機は旋回して再び現れて、会場の上空を低空で飛行。上昇して消え去った。およそ1分間の初公開だった。

 中国空軍の報道官はこの一般公開に先立ってJ20の開発は計画通りに進んでいると説明。J20は「国家の主権と安全、領土保全の維持という使命」に寄与するとの考えを強調した。これまで、J20に関する情報はほとんど公にはなっていない。J20は2015年末までに試作機が9機製造され、11月1日に一般公開されたのはこのうちの2機とみられる。

「F22の対抗機になり得る」vs「J20のステルス性能は不十分」

 ベールに包まれてきたJ20の性能を推し量ることができる機会とあって、初のお披露目が注目されたが、評価は大きく分かれたようだ。ロイター通信は、J20がF22の対抗機になり得るとの見方を紹介。習近平国家主席は軍事改革を進め、新兵器や防衛システムの自国製造を増やしていると指摘。今回のデモフライトに関しては「何らかの意味があるとすれば、それは中国が確実に目的へ向かっているようだ」とした。

 一方、朝鮮日報の日本語版は台湾の中央通信などの報道をもとに、中国人民解放軍に詳しい軍事専門誌「漢和防務評論」の平可夫編集長の話を引用。平可夫編集長はデモフライトをみた結果、J20は完全なステルス機能を備えた第5世代の戦闘機ではないとの見方を示した。

 その上で、F22はもとより、ロシアのスホーイ30MKIとスホーイ35でも可能な高難易度の飛行をしなかったと指摘。F22に比べて機体が大きく、翼の面積も防空レーダーに反射されかねないほど広く、F22やロシアの第5世代戦闘機T50に比べてステルス機能は相対的に低いとした。

やはり、エンジン開発がネックに

 戦闘機にとってエンジンはその性能を大きく左右する重要な要素で、中国は1980年代から戦闘機搭載用のエンジン、WS10の開発に着手した。2010年代半ばにはWS10に関する技術的な成果を一定程度は納めたとされ、1990年代にさらに高性能のWS15の開発に乗り出した。

 中国は2011年にJ20の試験飛行を行ったが、このときの2機のうち1機にはWS10が、ほかの1機にはロシア製エンジンのAL31Fが搭載されていたとみられている。だが、WS10は性能的には中国空軍を満足させるものではなく、またWS15の開発は難航しているとみられ、J20はロシア製エンジンを搭載することになるとみられる。

 中国はレーダーに捕捉されにくい特徴を持つ次世代ステルス機としてJ20と「殲31(J31)」の開発を続けており、J20は来年にも配備されるとの報道がある。