インド富裕層が「次」の旅先探す…日本政府、13億人巨大市場狙う

 

日本の自治体など菜食料理や雪山PR

 インド人の訪日観光客が急増しているのを受け、日本の自治体や旅行業界が「おもてなし」に本腰を入れ始めた。巨大なベジタリアン(菜食主義者)人口を取り込もうと菜食の料理店を紹介したり、ヒンズー教徒が神聖視する雪山のツアーをPRしたりと工夫を凝らす。日本政府は2020年の東京五輪を見据え、年内にもインドに誘致拠点を設置、13億人の巨大市場に切り込む構えだ。

 「旅行中はインド料理ばかりだった」。JR東京駅で、10日間の日本滞在を終えた首都ニューデリー出身のサンガム・クマリさんは残念がった。インド人の3~4割を占めるとされるベジタリアンで、肉や魚介類を含まない和食を見つけられなかった。「盛り付けが美しい和食を試したかった。材料を示す英訳メニューがあれば…」。別のインド人男性も「果物だけの旅だった」とため息をついた。

 経済成長に伴う旅行ブームで、インド富裕層は欧米や東南アジアの「次」の旅行先を探している。5月には月単位で過去最高の1万3600人が来日。ただ、インド系住民が多い欧米と違い、日本では菜食が難しいのがネックで、このままでは訪問者が頭打ちになる恐れもある。

 具が野菜だけのお好み焼きやラーメン、色とりどりの野菜をのせたすし。日本政府観光局(JNTO)は今年、東京や京都、広島など9都市の菜食料理店約40店をまとめた冊子を作った。「和食にイタリアン、中華と、国内の菜食料理店は増えている」と担当者。JNTOは近く、ニューデリーに初のインド事務所を設け、冊子を地元の旅行業者に配る。大阪観光局は菜食など約40店のインターネット紹介を準備、横浜市も同じ取り組みを検討中だ。

 一方、インドに詳しい東京都の旅行代理店カイラスの落合一民社長は「日本を旅行するインド人は知識層が中心で、買い物より歴史や文化を楽しむ傾向がある」と指摘。神社での「みこ体験」ツアーを計画し、異国情緒を味わってもらおうとPRしている。広島や長崎の原爆関連施設の訪問も関心が高いという。

 また、ヒンズー教では雪山は神の居所として好まれ、スイスは憧れの地だ。これに目を付けた新潟県南魚沼市は「美しいスキー場があり、コメも野菜もおいしい」(南雲康一・商工観光課主幹)とPRするため今年1月、誘致団をインドに派遣した。北海道観光振興機構も、インド人に雪景色の旅を売り込んでいる。

 インド南部バンガロールで旅行会社を営むニランジャン・セナパティ社長は「インド人客は好奇心が強い。桜の花見ツアーも人気が出そうだ」と話した。(東京、ニューデリー 共同)