新大統領から名スピーチは?トランプ氏の英語レベルは小6、クリントン氏は中学生

米大統領選

 今回の米大統領選では、候補者の低次元な言葉に注目が集まった。下品な表現を連発した共和党候補の「暴言王」ドナルド・トランプ氏(70)に引きずられるように、民主党候補のヒラリー・クリントン氏(69)も個人攻撃を強めた。対立をあおった醜悪な応酬を乗り越える名演説が、新大統領から聞かれるのだろうか。

 テレビ討論会でクリントン氏に「such a nasty woman(嫌な女)」などと悪態をつく一方、「wanna(want to)(~したい)」「folks(みなさん)」など親しみやすいカジュアルな表現を多用したトランプ氏。

 青山学院大の米山明日香准教授(英語音声学)は、その特徴を「言葉遣い、語彙、態度はスピーチというよりトークショー。『no』や『not』などの否定語、攻撃的表現が多い。聴衆を引き込む感じを演出しつつ、対立をあおった」と解説する。

 クリントン氏については「トランプ氏の攻撃をうまくかわしていた」としたが、トランプ氏の資質を辛辣(しんらつ)に攻撃する場面もあり、米山氏は「結局は恥ずかしいやりとりになってしまった」と残念がる。

 両者の英語のレベルに差はあるのか。米カーネギーメロン大・言語技術研究所が今年3月に発表した論文によると、主な歴代大統領候補者のスピーチで使われた英語は6~8年生(日本の小学6年生~中学2年生に相当)レベルで、トランプ氏の文法は6年生をやや下回り、語彙は7年生程度。クリントン氏は文法7年生、語彙9年生(中学3年生)程度だった。

 聴衆に理解されやすいようにという配慮がうかがえるものの、米国の有力地方紙「ボストン・グローブ」(電子版)は同様の分析をしつつ、大統領の一般教書演説のレベルが下がっているなどとして、「このままでは漫画レベルになる」とする専門家の警告を紹介している。

 一方、「演説の名手」オバマ氏が大統領に就任した8年前に演説本ブームに沸いた日本の出版業界。

 当選決定直後の2008年11月に「オバマ演説集」(CD付き)を出版、60万部の大ヒットを飛ばした「朝日出版社」の山本雄三・第3編集部長は「だらだら言いたいことを言っている印象」と、トランプ氏を酷評。「人の心に届く演説の才能があるクリントン氏が大統領になれば」と出版を見据える。

 逆に「ドナルド・トランプ演説集」を9月に出版した「晋遊舎」の山中進編集局長は、「売れるのはトランプ氏。(演説には)米国人の本音が詰まっている」と話す。ただ「(トランプ氏の英語は)早口で聞き取りにくく、心地良くない」とCDは付けていない。

(住井亨介)