トランプ大統領で、いいじゃないか 日本の外務省は“下手を打った”

トランプ氏勝利

 ついに「驚くべき日」がやってきた。

 シリア難民の大規模流入をきっかけに欧州を席巻した排外主義と一体化した反グローバリズムの大波は、英国に欧州連合(EU)からの離脱を決意させ、米国のエスタブリッシュメント(支配階層)を直撃した。

 いや、打ち砕いた、といっても過言ではない。トランプ氏勝利で日本の株価は暴落し、円が急騰したのもむべなるかな。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のお蔵入りが確定的となったばかりか、日本の安全保障の先行きも「日本がタダ乗りしている」と日米安保を誤解する米最高司令官の登場によって予見不能となった。

 蛇足ながら、日本の外務省はまたも下手を打った。先月から今月にかけて話を聞いた高官や有力OBの誰一人として「トランプ大統領」を予測していなかった。某高官などは「接戦ですらない」とまで断言していた。外務省の楽観的な見通しも後押ししたであろう9月の安倍晋三首相とクリントン候補との会談は、失策としか言いようがない。

 彼らの予測のもとになった各種世論調査は何の役にも立たず、クリントン候補に異様なまでに肩入れした米メディアがいかに嘆こうが、さいは投げられたのだ。だが、モノは考えようである。

 トランプ大統領で、いいじゃないか。

 トランプ流の「在日米軍の駐留経費を全部出せ」といったむき出しの本音には、日本も本音で向き合えばいいのである。

 大統領になったらそんなむちゃな要求はしないだろう、という幻想は捨てなければならない。いよいよ米軍が撤退する、となれば、自衛隊の装備を大増強すればいい。その際は自前の空母保有も選択肢となり、内需拡大も期待できる。沖縄の基地問題だって解決に向かうかもしれない。

 トランプ氏が“容認”する日本の核兵器保持は、唯一の被爆国という国民感情が強く、現実的ではないが、中国をにらんだ外交カードとしては有効だ。

 TPPも米国抜きで発効させる方策を真剣に検討していい。

 日米安保体制の枠内で憲法9条がどうの、安保法制がどうの、といったことが大問題となった牧歌的な世界はもはや過去となった。

 日本も米国に軍事でも経済でも過度に依存しない「偉大な国」を目指せばいいだけの話である。