TPP 米議会、年内承認は絶望視 日本政府、自由貿易の維持アピールを
TPPをめぐっては、脱退を掲げた共和党のドナルド・トランプ氏が米大統領になることで、早期発効は絶望的だ。オバマ政権は年内の議会承認を目指す構えだが、既に困難な状況。超大国の米国が極端な保護主義に走れば世界経済に与える影響は大きく、政府はトランプ氏に自由貿易体制の重要性を説明し、翻意を促す必要がある。
「TPPが年内に議会に提出されることは確実にない」。米議会で過半数を占める共和党の重鎮、マコネル上院院内総務は9日の記者会見で、来年1月までの「レームダック(死に体)議会」ではTPPを承認できないとの考えを示した。
トランプ氏は大統領就任日にTPP脱退を宣言すると表明し、日本など他の参加国との再交渉も行わないとしている。頼みの綱だった年内承認が見送られればTPPが長期にわたって漂流するのは避けられない。
トランプ氏は選挙期間中、TPPを含む自由貿易が米国内の製造業衰退や賃金伸び悩みの原因だとしてやり玉に挙げ、対米輸出が多い日本や中国、メキシコの商品について関税を引き上げると主張。特に対日貿易で赤字額が大きい乗用車は標的になり、現在の2.5%から日本の米国産牛肉の関税と同じ38.5%まで上げるとぶち上げた。
安倍晋三首相は17日に予定するトランプ氏との会談で一連の発言の本音を探るとともに、覇権主義の姿勢を強める中国を経済的に包囲するTPPの意義を説明し、就任後の批准について可能性を探るとみられる。
経済産業省幹部は「トランプ氏はビジネスマンだ。恐らく思想に基づいて主張しているわけではない。実利を説けば分かってくれるはず」と期待を寄せる。
一方、TPPは発効要件である域内GDP(国内総生産)の85%以上の国が批准しなくても、合意内容自体は消滅しない。トランプ氏が就任後に翻意するか、4年後の選挙で推進派の新大統領が誕生すれば、発効する可能性は残る。
SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミストは「短期的には、保護主義的な政策の方が(日本にとって)影響が大きい」と懸念する。このため、元来は自由貿易に積極的な共和党の議員に働きかけ、まず関税引き上げなどを防ぐとともに、TPPは再交渉による合意内容の修正を認めて米議会の承認を促すべきだと指摘している。(田辺裕晶)
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■TPPをめぐる主な発言
・トランプ氏
米製造業の命取りになる。大統領就任日に脱退を宣言する
・マコネル米上院院内総務
年内に議会に提出されることは確実にない。トランプ氏が現在の協定に反対していることは明らかだ
・ニュージーランドのキー首相
(年内に米議会で)承認される可能性はゼロに近い
・アーネスト米大統領報道官
オバマ大統領は年内の議会承認が最善だと確信している
・菅義偉官房長官
12カ国の首脳が早期発効を目指すと確認している。オバマ大統領も本年中の議会手続きに全力で取り組んでいる
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