米政治空白に乗じる中国に気をつけろ 安倍政権しっかり対米工作すべき

 

 米大統領選は共和党のトランプ候補の勝利で終わった。従来の外交・安全保障路線に「ノー」を唱える新政権の登場で、当面の間、米対外政策に空白を生みかねない。それに乗じるのは中国である。北朝鮮情勢をみよう。

 北の9月9日の5回目の核実験に対し、国連安保理は制裁強化に向け、動き出したはずなのに、2カ月経っても何も決まらない。レームダック同然のオバマ政権は無力だ。大統領選では外交政策そっちのけの泥仕合が続いた。その間隙をついてきたのは中国だ。

 これまで対北朝鮮国連制裁決議に応じたのも見せかけで、実際には北向けにせっせと軍事転用可能な物資の輸出を増やす一方で、北からの禁制品輸入品を増やして北の外貨稼ぎに協力してきた。グラフは中国からの石油製品と鉄鋼製品の対北輸出量の推移である。安保理制裁があろうと、北が核実験を繰り返そうとも、ほぼ一貫して増えている。とりわけ、習近平氏が共産党総書記に就任した2012年以降の急増ぶりが目立つ。

 重油、ガソリンなど石油製品、鉄鋼製品を確保できなくなると、北朝鮮軍は無力化するのだが、北京は民生用だと言い張って対北供給を増やしてきた。その証拠はほかならぬ、中国税関当局の統計データで、月初めに核実験があったことし9月の中国からの石油製品と鉄鋼製品輸出量は13年2月の3回目の核実験後に比べいずれも3・9倍と急増している。

 習政権の後ろ盾のおかげで、北はカネもエネルギーも武器材料の確保に不自由しない。北京は金正恩氏をもてあまし、その首のすげ替えを狙っていると見る向きもあるが、経済データをみれば根も葉もないフィクションに過ぎない。

 今年1月の4回目核実験を受けた、3月の国連安全保障理事会による対北制裁決議2270号によって、北からの輸入が禁じられているはずだが、8月の鉄鉱石の輸入が2・7倍以上に増え、石炭は48%増だ。

 北京は制裁決議の抜け穴をまんまと利用している。制裁決議をよく読むと、ただし書きがあり、北の輸出収入資金の用途が核やミサイル開発など軍事ではなく、民生向けであれば、制裁対象にはならないという。カネに色はないのだから、中国が支払うカネが民生に限定されるはずはないのだが、中国はそれを盾に白昼堂々と禁制品を輸入している。

 石炭、鉄鉱石などの輸入のみならず、中国は対北投資、北朝鮮企業の中国内での活動などで北の外貨稼ぎに協力している。このことは米国務省も国連事務局も掌握しているはずなのだが、ワシントンはアクションをとらなかった。

 「中国は米国が1歩後ろに引けば、必ず2歩出てくる」とは、これまでの共和党幹部の一貫した対中観だ。国内優先をうたうトランプ氏がそうした意見に耳を傾けるかどうか、不確かだ。安倍晋三政権は米政権移行期間のうちに、しっかりと対米工作すべきだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)