日露交渉に暗雲…投資案件策定、つまずきの懸念も 担当閣僚を拘束

 

 ウリュカエフ経済発展相が身柄を拘束され、ペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせ予定していた世耕弘成経済産業相との会談も中止になった。来月15日のプーチン大統領訪日まで残り1カ月となり、協力案件の策定作業は大詰めを迎えている。後任が速やかに決まらなければ北方領土問題を含む平和条約交渉の先行きに暗雲が漂うことになる。

 世耕氏は身柄拘束について「ロシアの国内問題」と述べ、両政府で約束した作業計画の策定は「後任の方が誠実に対応してほしい」と求めた。

 ウリュカエフ氏はプーチン大統領の指名で経済協力に関する日本の交渉相手を担ってきた。世耕氏は協力案件の目玉となるエネルギー分野ではノバク・エネルギー相、プーチン大統領が重視する極東の再開発ではガルシカ極東発展相とも協議しているが、全体の取りまとめはウリュカエフ氏と開く「日露ハイレベル作業部会」で行う予定だった。

 経済協力の事業は日露双方の提案を合わせて100件程度に上るといわれ、仮に全て実行すれば投資総額は数兆円規模に上る可能性が高い。ロシア側の提案にはシベリア鉄道の延伸や、サハリン(樺太)と北海道を送電線でつなぐ「エネルギー・ブリッジ」などの大型案件が数多く含まれる。

 日本政府はウリュカエフ氏との間で経済協力を実現可能な範囲に絞り込もうとしていた矢先だけに、身柄拘束は寝耳に水だった。経産省幹部は「事務方の陣容が変わらなければ交渉に影響は出ないと思うが、後任が決まるまでどうなるか分からない」と困り顔だ。

 経済協力は、日露間の融和ムードを演出し、北方領土問題でプーチン大統領の譲歩を引き出すための“呼び水”だ。それだけに、最終的な協力案件の集約でつまずけば、領土交渉にも影響が出る懸念は拭えない。(田辺裕晶)