安倍首相、トランプ氏会談 TPPかRCEPか…メガFTA、米中の主導権左右
安倍晋三首相と次期米大統領、ドナルド・トランプ氏との会談は友好的なムードで終わったが、トランプ氏が脱退を掲げる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効は見通せないままだ。日本は米国が離脱すれば世界の自由貿易の軸足が中国に移る懸念に加え、日米主導で合意した「21世紀型の貿易ルール」に加わる利益を強調し、トランプ氏の翻意を促したい構え。
「TPPの基準をアジア太平洋地域に広げていくべきだ」。世耕弘成経済産業相は17日、ペルーでTPP参加国の貿易担当相による会合を開き、保護主義の流れに対抗するため各国に速やかな批准を呼び掛けた。
会合は世耕氏が議長を務め、オーストラリアやニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ブルネイが参加した。各国はTPPに加え、もう一つの巨大自由貿易協定(メガFTA)交渉にも名を連ねている。中国が力を入れ、米国が参加しない「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」だ。
世耕氏は「質の高いRCEPを加速させることが共同の責務だ」とも指摘。トランプ氏が説得に応じない場合、市場の規律と法の支配に基づく日米主導の貿易秩序は見限られ、地域の覇権が中国に移る。そんな“警告”が透けてみえる。
TPPか、RCEPか。2つのメガFTAのうち、どちらが実現するか。その行方次第で、米中どちらがアジア太平洋の経済ルール作りで主導権を握るかが左右される。
米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の試算では、TPPが発効しRCEPが発効しなければ、中国に220億ドル(2兆4200億円)の経済損失が出る。一方、RCEPが発効しTPPが発効しない場合は、逆に880億ドルの経済効果をもたらす。
中国の影響力拡大を警戒する発言を繰り返してきたトランプ氏にとり、TPP脱退が逆に中国の立場を強めることになるとの主張は説得力を持つはずだ。
大統領選で米韓FTAに反対したオバマ大統領が、就任後一転して成立に動いた例もある。政府交渉筋は「TPP参加と脱退の損得を説明すれば必ず分かってくれるはず」と、トランプ氏の翻意に期待をつなぐ。
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