「週5回」「1日3回」…即席ラーメン消費、韓国が世界ダントツ1位のワケ

 

 日本から世界に広がったインスタントラーメン(即席麺)。実は、世界で1人あたりの消費量トップは、ダントツで韓国だ。世界ラーメン協会(本部・大阪府池田市)が調査した世界総需要から1人あたりの消費量を算出すると、韓国は2011~15年の5年連続で1位。15年でみると、日本が7位の43・6食に対して、韓国は1・6倍の70・9食にのぼる。2位のインドネシアと3位のベトナムはそれぞれ51食余りで、韓国は群を抜いている。韓国でインスタントラーメンが発売されたのは、日本のチキンラーメンが登場して5年後の1963年。激辛麺が多いのが特徴だが、なぜここまで愛されるようになったのか。(張英壽)

 キムチ、青トウガラシ乗せ、シメはご飯で

 2015年の韓国人のインスタントラーメン消費量70・9食を、1週間単位にすれば1・36食になる。ただ、これは平均値で、好きな人は当然、もっと多い。果たして1週間にどれだけ韓国語でいう「ラミョン(インスタントラーメン)」を食べているのか。訪日外国人客でにぎわう大阪・ミナミの道頓堀(大阪市中央区)で、韓国人に質問してみた。

 「5回は食べる」と答えた韓国中部の大都市・大田市の男性会社員、金周日(キム・ジュイル)さん(35)は「4回は自宅で袋麺を調理しています。1回はコンビニで食べるカップ麺」という。また「半分くらいは『辛(シン)ラーメン』。そこに(猛烈に辛い)青トウガラシを入れて、キムチと一緒に食べます。卵はあれば入れる」とつくり方を教えてくれた。韓国ではインスタントラーメンにキムチを合わせるのは必須だが、さらに激辛ラーメンとして知られる「辛ラーメン」に青トウガラシを入れるとは、すごい組み合わせだ。麺をすべて食べた後は、スープにご飯を混ぜて食べるそうだ。

 周日さんがあげた「辛ラーメン」は、韓国ではシェアトップを維持し続けている超人気製品だ。名前の通り辛さが特徴で、袋麺もカップ麺もある。

 「週5回くらいだけど、1日3回食べたこともある」と答えたのは釜山市の韓国伝統料理店副社長の男性、閔千圭(ミン・チョンギュ)さん(36)。「小学校のとき両親が働いていて、自分でつくっていた」と思い出す。どんなときに食べるかと尋ねると「チーズとか油ものの料理とかを食べた後の口直し。酒を飲んだ後にすっきりさせるためにも食べる」という。韓国人は辛いものは好きだが、脂っこいものは苦手だ。

▼「プッシュ通知」始めました。詳しくはこちらへ

 千圭さんに、食事はインスタントラーメンだけで足りるのか聞くと、やはり「最後はスープにご飯を混ぜて食べる」と話した。韓国料理は汁物が主菜であることが多い。日本では行儀が悪いが、汁にご飯を入れる食べ方は普通だ。

 雨が降ると食べたくなる、兵役時代の思い出も

 女性はどうだろうか。

 「1週間に4回」と答えたのはソウル市のメーキャップアーティスト、方想敏(パン・サンミン)さん(33)だ。「毎日ご飯だとあきてくるでしょ。簡単に食べたいときに」と説明する。酒や脂っこいものの後に食べるというのはほかの人と同じだったが、「雨が降ると欲しくなって。寒いからかな」とちょっと変わった回答をした。韓国のポータルサイトで検索すると、同じ内容の書き込みがあった。

 ところで、韓国では、興味深いことに、インスタントラーメンは男性の兵役の思い出とつながっている。

 釜山市のコーヒーショップ経営の男性、李東贊(イ・ドンチャン)さん(37)は「今は週に1回だけしか食べませんけど、兵役で軍隊にいた頃は、3、4回食べた。ほかにおいしいものがなかったのでね」と振り返った。補給品の中にインスタントラーメンがあり、「思い出の味。軍隊時代とラーメンがつながっている」と述懐した。

 首都圏の水原市からやってきた男子大学生、安修用(アン・スヨン)さん(21)は3週間前に軍隊を除隊したばかり。「入隊前は1カ月に1、2回しか食べなかったんですが、入隊後週に3、4回食べるようになった」という。「軍隊の食事はまずい。みんなで会食するときも、冷凍食品とかインスタントラーメン。軍隊とインスタントラーメンは切ってきれない」と打ち明けた。

 1人当たりの消費量は、アジアがベスト10独占

 「インスタントラーメン産業の健全な発展に資することを目的」にチキンラーメンを考案し、日清食品を創業した故安藤百福氏(1910~2007年)が中心となって設立された「世界ラーメン協会」。日清食品ホールディングスなど世界25カ国・地域の即席麺メーカーを含む約170社が会員になっている。

 協会が推計している資料にインスタントラーメン(即席麺)の世界総需要がある。2011~15年の各国・地域の需要(消費量)をホームページで公開している。15年は中国が404億3千万食と1位で、2位インドネシア(132億食)、3位日本(55億4千万食)と続き、52位まで算出しているが、1人あたりのデータはない。

 人口が10億人を超える中国が多いのは当たり前で、これでは各国の人々にどれだけ好まれているかわからない。そこで、外務省や総務省の人口データをもとに、15年の1人あたりの消費量を試算してみると、トップは韓国の70・9食で、2位以下を大きく引き離していることが分かった。

 2位以下は、2位インドネシア(51・8食)▽3位ベトナム(51・4食)▽4位タイ(46・6食)▽5位マレーシア(46食)▽6位ネパール(44・9食)▽7位日本(43・6食)▽8位フィリピン(34・5食)▽9位中国(29・2食)▽10位台湾(28・9食)-の順で、すべてアジアが占めている。外務省の各国・地域の人口データは15年以外のものもあるが、上位10位はおおむねこの順番だろう。

 1年は52週あまり。平均では唯一韓国だけが、週に1度以上、即席麺を食べていることになる。

 協会によると、11~14年とも1人あたりでは韓国がトップ。11~14年の韓国人口統計を使って計算すると、11年70・8食▽12年69・1食▽13年71食▽14年69・9食-とほぼ同じだ。

 料理の具材としても活用

 韓国でなぜ、これほどインスタントラーメンが好まれているのか。

 協会の桜井功男(のりお)事務局長は「韓国では、日本のようにラーメン店で食べるラーメンはほとんどなく、『ラーメン』イコール『即席麺』であることが大きい」と話す。また「韓国では朝食でも、外食でも即席麺を食べる。鍋にも入れるが、麺は日本より太く、煮込んでもコシがある」と指摘する。

 確かに、韓国では、プデチゲという辛い鍋料理に定番として即席麺が入っているほか、ほかの鍋料理にも使われ、スーパーでは具材としてスープなしの即席麺が売られている。学校の食堂や粉食(プンシク)と呼ばれる軽食店では必須のメニューだ。コンビニにイートインコーナーもあり、多くの人がカップ麺に湯を注いで食べている。

 また日本の袋麺のインスタントラーメンは最後にスープを入れるのが普通だが、韓国は違う。最初にスープを入れてから煮込むのが普通で、ゆで時間も日本よりもやや長い4~5分程度だ。

 一方、韓国料理研究家の本田朋美さんは「韓国のスープ文化が関係している」と分析する。「韓国の食はまずスープというところがある。サムゲタンやクッパ、テールスープ、スンドゥブチゲ、キムチチゲなど主菜がスープ類。こうした食文化に、インスタントラーメンが合致したのではないか。日本ではラーメンのスープを残す人もいるが、韓国ではスープを残さず飲む」と指摘する。さらに、「辛い食べ物ですっきりするという感覚もあるため、激辛ラーメンが受けているのだろう」と話す。

 ちなみに、アジア以外の15年の1人あたりの消費量は、ニュージーランド(18・9食)やオーストラリア(15・4食)、米国(13・6食)、ロシア(12・6食)などは比較的多い。ドイツ(2・2食)やフランス(0・9食)、スペイン(1・1食)などヨーロッパ各国は概して低かった。

 チキンラーメン発明5年後に韓国へ…

 韓国初のインスタントラーメンが発売されたのは、元祖のチキンラーメンが登場して5年後の1963年に発売された三養(サミャン)食品の「三養ラーメン」。日本の明星食品から技術提供を受け誕生したが、現在の韓国で最も高い人気を集めているのは農心(ノンシム)の「辛ラーメン」だ。

 農心によると、86年に発売され、91年に国内シェア1位となり、2015年まで25年連続でトップを維持しているという。前述したように激辛が特徴で、麺は日本のものよりやや太く、牛肉スープ味だ。

 農心の広報担当者は「辛ラーメンが発売されるまで、韓国には、あまり辛いインスタントラーメンはなかった」という。現在、韓国の即席麺市場は激辛麺が席巻しているが、当時は状況が違っていた。担当者は「辛く、ヒリヒリする味をつくり出し、韓国人を魅了した。スープにコクのあるうまみを出した」と説明し、「辛ラーメンの総販売量は約280億個、麺の長さで14億キロに達する」と強調した。

 辛ラーメンは世界約100カ国に輸出されており、日本では、現地法人の「農心ジャパン」が平成14(2002)年に設立された。辛ラーメンは韓流ブームもあって売り上げを伸ばし、最近ではスーパーでも簡単に買えるようになっている。

 なぜ日本人にうけているのだろうか。

 農心の関係者は「やはり辛いものがブームになっていることが大きい。日本の即席麺メーカーも激辛商品を出している」という。さらに「辛ラーメンはただ辛いだけではなく、辛さの後にうまみが来る。スープも煮込んでこそ味が出るようになっている。袋麺のパッケージに最初にスープを入れるよう調理法を説明しているのも、そのためだ」と話す。