韓国大統領辞意 対日批判再燃も 対中関係は一層悪化

 

 【ソウル=名村隆寛】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、任期満了前の辞意を表明した。慰安婦問題をめぐる日韓合意など対日関係では「日本との合意ならいつでもひっくり返せる」との反日世論が現在も横行。国政の停滞はすでに韓国の外交にも影響を及ぼしている。

 12月の東京での日中韓首脳会談への朴氏の出席も見通せないなか、韓国外務省報道官は29日の定例会見で「日本を中心に日程を調整中だ」と述べた。朴氏が出席するとの従来の立場を変えなかったが、外交の現場は朴氏の辞意表明を困惑を持って受け止めている。

 韓国は日中韓首脳会談の「主導的な役割を担ってきた」と自負し、今回の会談についても、昨年ソウルで「ホスト国」として合意を取りまとめた。韓国の国内事情で中止や延期となれば、「韓国外交の大きな失点」(外交筋)となる。

 また、今月、ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に朴氏は出席せず、黄教安(ファン・ギョアン)首相が代理で派遣された。安倍晋三首相が各国首脳と意見交換する一方で、黄氏は各国首脳らと会談らしいものもできずに帰国し、世論を落胆させた。

 韓国は米国との間で、北朝鮮のミサイルに対処する米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の来年夏ごろまでの配備を決定している。世論の半数以上は現実を直視し、賛成しているが、反対論も根強い。

 さらに、次期米大統領のトランプ氏とのパイプ作りも模索状態で先行きは不透明だ。

 加えて、中韓関係は一層悪化。THAAD配備への中国の反発のためで、重要な経済パートナーであった中国との貿易にも陰りが見えている。韓国メディアは日中韓首脳会談の日程が決まらないのは「中国が韓国の状況を注視しているため」との見方を紹介し、中国への不信感を募らせている。

 さらに、今年2度の核実験を強行し、弾道ミサイルの発射を続けていた北朝鮮が、韓国の混乱に合わせるかのように、挑発を中断している。対北強硬姿勢をとってきた朴氏の退陣が、国際社会の対北共同歩調に悪影響を及ぼす可能性もある。

 自らが政権の座に残る限り、対外関係にも悪影響が及ぶとの懸念も、朴氏が辞意表明した一因とみられるが、辞職の期限が明確でないだけに、外交の停滞が続く可能性も残っている。