東電「実質国有化」を延長へ 社内の士気低下は不可避、人材流出も深刻化

 

 経済産業省は5日、東京電力ホールディングス(HD)の経営改革のほか、福島第1原発(1F)の廃炉や賠償問題を検討する「東電改革・1F問題委員会」(東電委員会)の会合を開き、政府が東電HDの経営を主導する「実質国有化」の状態を延長する方針を示した。現行の計画では2017年4月から関与を徐々に減らす予定だったが、原発事故の処理費用が大きく膨らむことを踏まえ、廃炉や賠償などで国の関与を続ける。

 新しい案では、小売りや発電などの「経済事業」と、廃炉や賠償などの「福島事業」に分け、福島事業の公的管理を継続する。経済事業は早期に自立させる方針。福島事業を分離することで、原発や送配電事業をめぐる業界再編に他社が参画しやすくする狙いもある。

 経産省は、東電HDの収益の柱となる柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に向け「先進的な他電力の協力もちゅうちょなく要請」する方針も改めて示した。他電力が関わることで、東電への地元の不信感を和らげ、再稼働につなげたい考えだ。

 またこの日の会合では、東日本大震災後から続く人材流出が深刻化していることを踏まえ、若手社員の抜擢(ばってき)など社内の士気を高める対策も議題に上がった。

 具体的には、経営改革を進める人材を育てるため震災以降中止している海外留学を来年度再開する案が示された。異業種での就業体験や、ベンチャー投資の専門家など外部の優秀な人材と一緒に働く機会を創出する案も出た。

 東電HDによると、11年度の依願退職者は前年度比約3.5倍となる465人。12年度は712人で、13~15年度も毎年約300~500人が辞めている。委員を務める日本商工会議所の三村明夫会頭は会合後、「仕事や権限を与えて、若手社員を成長させることが重要だ」と述べ、人材育成が急務との考えを強調した。

 だが、公的管理期間の延長方針が示されたことで、「脱国有化」を心のよりどころとしてきた社内の士気が一層低下するのは避けられない。東電HD首脳陣の一人は「(来年3月までの)社員のモチベーションをどう保てばいいのか」と嘆息する。

 政府は、新生・東電HDを電力システム改革の“先兵”として手元に置く姿勢を変える兆しはない。委員からは「世代交代でノスタルジー(郷愁)を断ち切るべきだ」との厳しい指摘もある。

 東電HD改革は業界再編が伴う。広い視野で、先を見据える能力を持つ優秀な人材を確保していくことが欠かせない。