容易でない所得税改革 酒税、配偶者控除…迫力欠く見直し

来年度税制改正

 与党が8日決めた平成29年度税制改正大綱は、配偶者控除の見直しやビール類の酒税一本化など長年の懸案にめどをつけた。ただ、踏み込み不足の感は否めない。大綱で「数年かけて取り組む」と明記した所得税改革の実現は容易でない。

 配偶者控除の年収要件引き上げでは、パート主婦らに就労を促す効果が期待される。だが、就労調整の原因となる「壁」は他にもある。企業の配偶者手当は「103万円」が基準になっているうえ、10月には社会保険料の支払いが必要になる年収基準が、130万円から106万円に条件付きながら引き下げられた。

 安倍晋三首相は「安心して結婚し、子供を育てることができる税制を目指す」と強調する。非正規雇用の増加などで、若年層を中心に年収の低下は顕著だ。共働きでも生活が厳しいという子育て世帯は多い。

 政府・与党は当初、配偶者控除を廃止したうえで、妻がパートでもフルタイムでも適用される夫婦控除の導入を検討した。だが、それを見送ったのは控除から外れ、増税になる世帯の反発を意識したからだ。酒税一本化に10年の期間をかけるのもメーカーや消費者に配慮した結果だ。

 大綱は高所得者の負担を増やす方針を明記し、配偶者控除に夫の所得制限を導入した。だが、控除対象の世帯をみると、夫の年収が高い方が減税額は大きい。大和総研の試算では一部の年金受給世帯(妻の年収160万~242万円)も減税対象になり、余裕のある高齢者に恩恵が及ぶ。

 今後の所得税改革は、高齢者に負担増となる公的年金等控除の見直しなどが争点で、抵抗も予想される。衆参両院で安定的な政治基盤がありながら、小幅な見直しにとどまった政府・与党が、本当に抜本改革に取り組めるのか。政府の覚悟が問われる。(田村龍彦)