米国で広がるドル高懸念 トランプ経済の「副作用」 製造業に逆風

トランプ次期大統領

 トランプ次期米大統領の当選後1カ月がすぎ、米国内でドル高への懸念が頭をもたげている。ドル高は米国の輸出企業にとって逆風で、トランプ氏が問題視してきた製造業の衰退や米国の貿易赤字を後押ししかねない問題だ。半面、ドル高はトランプ氏自身が打ち出す財政支出拡大や減税政策の「副作用」といえ、押さえ込むのは難しい。トランプ氏は雇用維持のために海外移転企業への報復などの対応策を明かしているが、リスクもはらんでいる。

 大統領選後の金融市場ではドル高基調が鮮明だ。7日のニューヨーク市場のドル円相場は1ドル=113円台後半。この1カ月で約9%も円安ドル高が進んだ。ドルは対ユーロでも高くなっている。

 ドル高は米国企業の輸出価格を相対的につり上げ、輸出拡大を目指す製造業には厳しくなる。トランプ氏は中国やメキシコなどの輸出が米国に貿易赤字をもたらしていると問題視してきたが、ハーバード大のジェフリー・フランケル教授は「次期政権下での貿易赤字拡大は確実」とみる。

 ドル高の背景には、トランプ氏が打ち出すインフラ投資や減税策が米国経済を活性化させるとの分析がある。ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は7日、3日連続で過去最高値を更新。この1カ月の上昇率は6.6%に達した。

 こうしたトランプ相場に乗り遅れまいと投資家がドルを調達してドル高を加速させており、連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測も、ドルの魅力を高めている。

 次期政権が今後もドル高に見舞われたとしても、レーガン政権が1985年に各国とドル高是正で一致した「プラザ合意」のような協調は難しい。国際社会は20カ国・地域(G20)などの枠組みで、競争力強化のために通貨の切り下げを行わないことで繰り返し一致してきたからだ。

 雇用維持のため、トランプ氏は大統領選後、海外に製造拠点を移した企業の米国への輸出に35%の関税を課すなどと主張。商務長官に指名された投資家のウィルバー・ロス氏も北米自由貿易協定(NAFTA)見直しで、米国への輸入を減速させる考えを示唆する。

 しかしこうした政策は経済成長の足を引っ張るリスクがある。トランプ氏が直面する問題は容易なものではない。(小雲規生)