富裕層や多国籍企業の税逃れ対策強化 「パナマ文書」で税制不信が浮き彫り

 

 与党が8日にまとめた2017年度税制改正大綱は、富裕層や多国籍企業の過度な節税を防止する対策を盛り込んだ。租税回避地での節税実態を暴露した「パナマ文書」問題をきっかけに納税者の不公平感や税制不信が浮き彫りになっており、政府は課税逃れに対する包囲網強化を急いでいる。

 今回の改正で、18年以降に引き渡される20階建て以上の新築のタワーマンション(タワマン)の固定資産税を見直す。中間層から1階上がるごとに税額が約0.25%上がり増税、1階下がるごとに約0.25%減税とする。

 15年1月の相続税増税前後からマンションの評価額と時価の差をついた「タワマン節税」がもてはやされていた。販売価格は階が高く眺望が良いほど値段が上がる。一方、相続税の算定には固定資産税の評価額が用いられ、部屋の広さが同じなら階数を問わず評価は同額。親が高層階を買って子供が相続すれば、現金のままより相続税が軽く済む。だが、今回の見直しで節税のうまみは薄まる。

 富裕層の税逃れ対策では海外移住の「5年ルール」を「10年ルール」に見直す。今は相続人と被相続人が海外に5年超住んでいれば日本の相続税は海外資産にかからない。これを逆手にとり相続税が非課税のシンガポールなどに資産を移す富裕層も少なくなかった。

 だが、17年4月から10年超居住していなければ、日本の相続税を課す。慣れない海外居住も資産防衛のためなら我慢できるが「10年は耐えらない」と帰国する人も出るかもしれない。

 一方、企業の過度な節税策では「タックスヘイブン対策税制」を見直す。現在は法人税率20%未満の国・地域に事業実体のないペーパー会社があると、親会社と所得を合算して日本で課税できるが、20%以上の国は対象外で税率差を利用した節税余地が残っていた。このため、税率20%以上の国でもペーパー会社には配当や知的財産などの所得に日本の税率で課税できるようにする。多国籍企業の課税逃れをめぐっては今後も順次、法整備が進む見通しだ。