トランプ次期米大統領でドル高?貿易赤字悪化? 「レーガノミクス」再現におびえる向きも

 

 ドナルド・トランプ次期米大統領が掲げる経済政策は、ロナルド・レーガン元大統領による経済政策「レーガノミクス」に似ているとの見方が広がっている。レーガノミクスは米ドルの独歩高を招き、ドル高是正のための「プラザ合意」は日本がバブル景気に突入する引き金となった。日本の金融市場では、レーガノミクス再現におびえる関係者もいる。(米沢文)

 熱狂的な「トランプ相場」が始まって9日で1カ月。米国債の利回りは急上昇し、為替相場はドル高・円安に傾いた。日本国債の利回りも上がり始め、日銀は11月中旬、指定した利回りで国債を無制限に買う「指し値オペ」を実施した。

 トランプ氏の主な経済政策は、大型減税やインフラ投資拡大だ。第一生命経済研究所の藤代宏一氏は「供給力重視の経済政策は、企業収益の拡大を通じ『強い米国』を作り上げようとしたレーガン政権と共通する部分がある」と指摘する。

 レーガン大統領が誕生した1981年当時、米国は景気後退とインフレが同時進行する「スタグフレーション」に陥っていた。レーガン政権が講じた投資減税と金融引き締め策は過度なドル高に直結し、米国は貿易赤字と財政赤字という「双子の赤字」に苦しんだ。

 ドル独歩高を是正しようとしたのが85年のプラザ合意だ。先進5カ国が協調介入に動き、円相場は1年で1ドル=240円から150円台に急騰。政府・日銀は財政出動や金融緩和で経済を下支えしたが、バブル景気とその崩壊へとつながった。

 SMBC日興証券の牧野潤一氏は「積極財政と金融引き締めの組み合わせはトランプノミクスも同じだ。ドル高や貿易赤字の悪化という帰結が想定できる」と警戒する。

 その場合に考えられるドル高修正の有力な手立ては当局の「口先介入」だ。あるエコノミストは「トランプ氏の為替水準に対する考え方を知るため、ツイッターにくぎ付けになっている市場関係者もいる」と打ち明ける。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「2018年以降にドル高修正が起きる」と予測。同年2月には、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が任期を迎える。河野氏は「(FRBが新議長の下で)ドル高修正と拡張財政を支える金融緩和に踏み切れば、スタグフレーションが起きる可能性がある」と話す。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)脱退を明言するトランプ氏は、保護貿易でドル高の不利さを無理やり覆す恐れもある。

 一方、日本の金融機関にとってトランプノミクスは商機となりそうだ。金利上昇で利ざや(貸出金利と預金金利の差)を稼ぎやすくなり、米国内ではインフラ投融資の機会が増えると見込まれるためだ。マネックス証券は、インフラ投融資で2%程度の利ざやが取れた場合、3メガバンク合計で1460億円の増益になると試算した。