自治体によるゲーム産業への支援活発に 松戸市、企業と開発コラボ

 
世界最大級の展示会「東京ゲームショウ2016」に出展した「松戸コンテンツ事業者連絡協議会」のブース=9月15日、千葉市の幕張メッセ

 千葉県松戸市が市内の企業と組み、スマートフォン向けゲームの開発を進めている。東京のベッドタウンという地の利を生かした産業振興が狙い。ゲーム産業をめぐっては自治体による支援の動きが全国的に活発になっており、専門家は「業界は流行の変化や人材流動が激しい。自治体の対応力が鍵だ」と指摘する。

 市がゲーム制作会社「ディッジ」と開発中の「ビットゲームメーカー」は、ユーザー自身が登場人物のせりふや音楽、敵の配置を自由に設定してオリジナルの物語を作れる。同社の担当者は「ゲーム作りを気軽に体験してもらいたい。作品はインターネットで公開できる」と話す。

 予算に国の地方創生加速化交付金1650万円を投じ、9月に世界最大級の展示会「東京ゲームショウ」で体験版を公開した。来年春に完成版を無料配信予定という。

 市は今年、ディッジら約10の事業者と「松戸コンテンツ事業者連絡協議会」を結成。今後、他の中小事業者らを対象に拠点となる不動産の紹介や作品コンテストを開催する。市の担当者は「情報の集積する東京に近い方が有利と考える事業者は多いはず。松戸は都心に近い割に家賃が安く、事務所費などの節約につながる」とアピールする。

 自治体による支援で先行するのが福岡市だ。2006年に九州大や企業と「福岡ゲーム産業振興機構」を設立。設立には人気ゲーム「妖怪ウォッチ」で知られる「レベルファイブ」も携わった。コンテストによる若手人材の発掘やオフィス賃料の補助に取り組み、昨年度は8社を誘致した。

 近年は仙台市や茨城県も、ゲームや関連産業の振興を目的とした団体を発足。学生が対象のビジネスセミナーや、作品発表のイベントを実施し、今年の東京ゲームショウで取り組みをPRした。

 福岡市にアドバイスをしている馬場章日本eスポーツ協会理事は「コンテンツ作りを企業、人材育成を大学や専門学校、両者の橋渡しを自治体が担うという産官学の連携が重要だ。松戸の協議会は『学』の担い手がいないので、大学などとの協力が課題だ」と話す。