日銀短観 トランプ効果・リスクが混在 先行きは慎重姿勢強まる

 

 企業が先行きに対する慎重姿勢を強めている。日銀が14日発表した12月短観で、大企業製造業の先行き業況判断DIは3期ぶり、非製造業は9期連続で悪化した。米大統領選後の「トランプ相場」で円安・株高が進み、証券会社が先行きを楽観するなど、足元の景況感は上向いているものの、トランプ次期米大統領の政策への不安感があるからだ。

 輸出企業が多い大企業製造業にとって、円安は追い風だ。代表的な自動車の先行き業況判断DIは2ポイント改善のプラス12、電機は6ポイント改善のプラス10だった。

 ただ、為替動向を厳しく見る企業経営者は多い。日立製作所の東原敏昭社長は英国の欧州連合(EU)離脱決定やトランプ氏勝利を引き合いに「固定観念を持ってみないというのが今年の教訓」と述べた上で、「為替は1ドル=100~120円の幅で見た方がいい」と大きく構える。

 大企業製造業の2016年度の想定為替レートは1ドル=104円90銭。前回9月調査から約3円上昇した。実勢の1ドル=115円前後と開きがあるところにも、企業の不安が見え隠れする。

 中小企業にとっては、トランプリスクが重くのしかかる。中小企業製造業の先行き業況判断DIは6期連続、非製造業は14期連続で下振れした。野村証券の美和卓チーフエコノミストは「円安進行や商品市況の反発によって、部品や原材料の仕入れコストが上がっているのに、大企業が販売価格の値上げに応じない」と指摘する。

 足元の内需の弱さも気がかりだ。消費関連の小売りや宿泊・飲食サービスは軒並み悪化した。

 帝国データバンクが同日発表した企業の意識調査によると、来年の景気見通しについて「分からない」と回答した企業は06年の調査開始以来、初めて3割を超えた。懸念材料として「米国経済」を上げた企業は4割超。美和氏は「円安で収益が持ち直してくれば、設備投資が徐々に増え、企業の慎重姿勢は解消してくるのではないか」と話している。(米沢文)

 ■円安でも国内消費振るわず

 SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストの話

 円安進行で業績改善が見込める機械関連の企業を中心に景況感の改善が目立った一方、円安の恩恵を受けにくい小売業などは依然慎重な姿勢だ。足元の円安は明るい材料だが、国内消費の回復には不透明感があり、業績を厳しめに見通す企業は多いだろう。トランプ次期米大統領の政策に対する期待が高まっている半面、懸念もくすぶり、先行きを楽観的に捉えるわけにはいかない。トランプ政権で米企業が税制面で優遇されるといった政策が取られれば、日本の貿易にマイナスとなり得る。日本企業の警戒感は根強く、設備投資計画も下方修正率が大きかった。

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 ■今後も世界経済に不透明感

 ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストの話

 今回の短観は、最近の円安進行や資源価格の回復による企業心理の改善と、世界経済の先行きへの不安が混在している印象だ。景況感が改善したのは素材系の業種が目立った。米国経済が好調なのに加え、中国経済に回復の兆しが見られることが背景にある。一方、小売業が弱く、個人消費の伸び悩みや、訪日外国人による消費の低迷が気がかりだ。トランプ次期米大統領の政策や、欧州で予定されている選挙の行方など今後も世界経済には不透明感が強い。多くの業種で先行きの景況感が悪化したのは、企業経営者が抱えている不安な心理を反映したといえる。