「カバディ」ショービジネス化、競技レベル向上 日本でも漫画出版、人気高まる

 
W杯のタイ戦で相手選手を捕まえるカバディ日本代表の選手たち=10月、アーメダバード(共同)

 インド発祥で鬼ごっこに似たスポーツ「カバディ」のショービジネス化が進み、国際色も豊かになり人気が沸騰している。約2年前にインドで初のプロリーグが結成され、10月には日本など12カ国によるワールドカップ(W杯)が9年ぶりに開かれ激戦を展開。日本でもカバディ漫画が出版され、ファンの裾野が広がっている。

まるで格闘技

 「攻撃の用意はできたか。踊れるか!」

 W杯会場となった西部アーメダバードの最新鋭スタジアム。ボリウッド音楽(インドの映画音楽)が響く中、司会者の呼び掛けに約6000人が歓声で応じた。「カバディ、カバディ」。独特の掛け声の中、7人組のチームが互いを捕まえ合う。囲み、倒す。格闘技さながらの迫力だ。激しいライトと効果音が盛り上げる。

 10月のW杯は日本やイラン、タイなど常連国に加え、ケニア、ポーランドなどが初出場。世界100カ国、8000万人以上がテレビ観戦した。アジア特有のスポーツとみられがちだが、将来の五輪種目採用を目指す国際カバディ協会のジャナルダン・ゲフナト会長は「世界規模のスポーツになった」と喜ぶ。

年収数千万円

 人気の背景にはインドの経済成長がある。スポンサーに余裕が生まれ、2014年から初のプロリーグ「PKL」が結成された。テレビで放映される試合の視聴者は2億人に増え、トップ選手の年収は日本円で数千万円になった。

 PKLは将来の国際展開を視野に各国選手を受け入れている。日本代表の主将、下川正将選手=東京都在住=は14年から初の邦人選手として西部ムンバイの「ユームンバ」に一時所属。知名度も高く、「インドのファンから写真撮影を求められた」と笑みを漏らした。

 日本代表の井藤圭順監督は今回のW杯について、インド側が専門コーチを各国に派遣し指導したため「競技レベルが大きく上がった」と指摘。カバディ新興国の技術と体力向上は顕著で、優勝はインドだったが、近年力をつけてきた韓国は予選リーグでインドを破る金星を挙げた。前大会3位の日本は、タイやケニアに及ばず予選敗退。井藤監督は「若い選手を鍛え、また戻りたい」と再起を誓った。

 日本でもカバディ人気は高まる。大手出版社の小学館は15年に漫画「灼熱(しゃくねつ)カバディ」を発表し話題を呼んでいる。日本カバディ協会によると、登録選手は約300人で愛好者は数万人。下川選手は「漫画を読み、競技を始める人が増えた」と話し、日本での盛り上がりを期待した。(アーメダバード 共同)

【用語解説】カバディ

 素手による狩猟がルーツとされるインド発祥スポーツ。語源は不明。2チームがコートの両側に陣取り、敵陣に1人で乗り込んだ攻撃選手が「カバディ」の言葉を唱えながら守備選手に触り、捕まらずに自陣に戻ると得点。守備選手らは攻撃選手の捕獲を目指す。競技ではタックルなど激しい接触もある。インドや周辺国の人気スポーツで、アジア大会では1990年北京大会から採用され、日本は2010年に初メダル獲得。五輪種目には採用されていない。(アーメダバード 共同)