日露首脳会談 日本外交の失敗 幸福実現党党首・釈量子

太陽の昇る国へ
ロシアのプーチン大統領(右)を出迎える安倍首相=15日午後、山口県長門市(代表撮影)

 --プーチン大統領来日を受けた日露首脳会談で、北方四島における共同経済活動の協議開始などで合意が得られたものの、進展が期待された領土交渉は前進が見られませんでした

 これまで安倍晋三政権は領土返還への期待を高めてきただけに、その対ロシア外交は失敗したといえるのではないでしょうか。領土交渉が不調に終わった背景には、ウクライナ情勢をめぐっての日本政府の外交判断の誤りが指摘できます。欧米とロシアの対立が深まった際、日本政府は欧米に同調し、対露制裁を発動しましたが、制裁ではなく、わが党が主張したように、欧米とロシアの橋渡しとなる外交を実施していれば、結果として、領土問題を動かすことにもつながったのではないかと思います。

 いずれにせよ、軍事力を背景に海洋進出を強める中国の抑止こそが、地域の安全保障上、最大の課題となるなか、ロシアとの関係強化は欠かせません。経済協力に関して、今回、3000億円規模の投融資などで合意しましたが、日露双方の発展に向け、前回も指摘したように、領土問題はいったん脇に置いてでも、経済関係はもちろん、安保協力も含めた日露関係の絆を強めながら、平和条約の締結を目指すべきであると申し上げておきたいと思います。

 --さて、今回が今年最後の本欄となりますが、振り返っていかがでしょうか

 本年2016年は、60年に一度の「丙申(ひのえさる)」の年であり、「革命の年」だといわれていましたが、なかでも米大統領選において、主要メディアの予測を覆したドナルド・トランプ氏の勝利は大きな衝撃を与えました。今後、「トランプ革命」ともいうべき世界潮流の変化がもたらされるはずです。

 --具体的には

 例えば、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱や、中国に対する高関税構想など、トランプ氏は国益を確保する姿勢を鮮明にしています。冷戦終結後、米国が主導してきたグローバリゼーションが自国産業の衰退や中国の台頭を招きましたが、トランプ氏は「強い米国」に向けて、この流れをひっくり返そうとしています。

 日本政府はTPPに関して米国に翻意を促す考えのようですが、米国の政策変化を踏まえ、通商戦略を見直し、日米間の貿易協定についても検討すべきだと思います。

 TPPは対中包囲網の形成という意義を有することから、幸福実現党もかねて推進してきましたが、TPPによらずとも対中抑止は可能です。トランプ氏は、中国を為替操作国に指定すると表明していますし、また、台湾総統との電話会談を行ったほか、「一つの中国」政策に縛られない考えを明らかにするなど、対中強硬姿勢を示しています。このトランプ氏の態度は心強い限りです。わが国も米国と手を携え、対中包囲網の構築を図るべきですし、その一方で、財政難にある米国の同盟見直し論もにらみ、日米同盟の双務性を高めつつ、自主防衛体制整備に努めるべきだと思います。

 --間もなく、安倍首相が真珠湾を訪問します

 安倍首相としては、日米同盟の重要性を国際社会に印象付ける狙いがおそらくはあるのでしょうし、真珠湾訪問は、今年5月、広島を訪れたオバマ大統領に対する返礼でもあるのでしょう。

 しかしながら、真珠湾に慰霊に行かれるのであれば、2013年12月以降途絶えている靖国参拝を行うべきだと思います。なぜ、官邸から2キロの靖国を素通りして、6000キロも先の真珠湾に行くのでしょうか。靖国神社に赴き、国のために尊い命をささげられた御霊(みたま)に哀悼の意を表することができないにもかかわらず、わざわざ外国に出向いて慰霊するというのは、筋違いだと言わざるを得ません。

 また、時代の趨勢(すうせい)が変わろうとするなか、オバマ氏の“レガシー”づくりに付き合い、ご機嫌をとっている場合などではなく、政府はトランプ新政権への備えをこそ、しっかりと行うべきです。国のかじ取りを過てば、国益を毀損(きそん)することになりかねません。党利党略に基づく場当たり的な政治とは、いいかげん決別すべきだと申し上げておきたいと思います。わが党としては、日本の国力を高め、地域の平和・繁栄に貢献する国家とすべく、引き続き、必要なことを堂々と主張していくつもりです。

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【プロフィル】釈量子

 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。