「チベットじゅうたん」大地震で打撃 ネパール、再建めど立たず難民脱出
昨年、ネパールを襲った大地震の影響で、現地在住のチベット難民が営むじゅうたん産業が深刻な打撃を受けている。ネパール政府が近年、中国に急接近したことでチベット難民への風当たりも強まり、ネパールを脱出する人も増えている。
「ここは私みたいなおばあさんしかいない。若い人は外国だ」。大地震で全壊した首都カトマンズ郊外のジャワラケル手工芸センター。木製の機織り機が並ぶ倉庫の仮工場で、1960年代に中国チベット自治区から逃れてきた女性が独特のデザインのじゅうたんを織りながらつぶやいた。
中国政府の弾圧を逃れたチベット難民が織るじゅうたんは、もともと首都郊外や国境周辺で生活の糧として生産され、産業化された。今ではカトマンズの人気土産だ。
ただ、2006年までの内戦で地方が荒廃。都市部や国外への難民移動が加速し、じゅうたん産業は失速した。大地震が追い打ちを掛けた。世界中から寄付を募るが再建のめどは立たず、関係者は「じゅうたんは、われわれの生活を支えただけでなく、ネパールの貴重な外貨収入源だったのに」と肩を落とす。
中国、ネパール両政府の接近も難民には逆風だ。ネパールは燃料などの輸入をインドに頼ってきたが、憲法制定をめぐる国内の対立から昨年秋に南部のインド系住民が国境を封鎖し、たちまち物資不足に陥った。当時の首相は「影響力行使を狙ったインドが非公式に関与した」と批判し、中国に接近。中国も貿易拡大やインフラ支援で応じる。
チベット難民福祉事務所幹部は「デモ禁止はもちろん、大事な仏教祭事にも最近は当局の監視が入る」と中国の影響拡大を示唆した。
ネパールのチベット難民は10年前に2万人いたが、現在では1万3000人ほどだ。じゅうたん産業もインド産の模倣品が出回り苦戦が続く。事務所幹部は「ネパールには受け入れてくれるだけ感謝している。でも、若い人は可能性を求め、どんどん外に出るだろう」と語った。(カトマンズ 共同)
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