中国の国有銀行が過去最大リストラ 3万6千人削減、収益悪化とネット金融拡大で
【上海=河崎真澄】中国の国有商業銀行が大幅な人員削減策を進めている。地元紙によると、過去1年で最大手の中国工商銀行が約7600人の行員を削減するなど、大手10行で少なくとも3万6千人以上が退職に追い込まれ、過去最大規模のリストラになっているという。
経済成長の鈍化に加え、預金金利と貸し出し金利の固定化で安定していた収入源が、ここ数年の段階的な金利自由化で崩壊。さらに、ネット金融決済が約5億人にまで普及し、個人顧客への窓口対応が必要な行員数が大幅に減るなど、銀行を取り巻く環境が激変したことが経営を一気に悪化させた。
4大国有商銀の人員削減は公表されているだけで工商銀行のほか、中国銀行の約6900人、中国建設銀行の約6800人、中国農業銀行が約4千人など。ほかにも交通銀行や招商銀行など中堅行で軒並み、数百人~数千人が削減されている。大手は人員削減により、円換算で年間に数十億円から数百億円の人件費の負担を軽減したという。
一部の人材はネット系の金融機関などに吸収されたが、高騰している不動産市況が下落に転じれば不良債権問題が顕在化し、「今後も銀行業界では1年で数万人のリストラが続く」(金融業界筋)とみられる。
銀行のみならず、過剰生産問題に揺れる鉄鋼や石炭などの国有企業も、工場の統廃合などで数十万人の規模のリストラに踏み切りつつあり、全土で広がる失業者の急増が社会不安に結びつかないかが懸念されている。
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