シンガポール、自動運転バス実用化へ公道試験 仏社と協力、3月開始

 

 シンガポールは、自動運転バスの実用化に向けた試験走行を3月に開始する。同国の南洋工科大学(NTU)が昨年11月、仏自動車メーカーのナブヤと自動運転技術に関して2年間の協力関係を結ぶ覚書に署名した。現地紙トゥデーなどが報じた。

 試験走行に使われる車両は、ナブヤ製の「アルマ」。座席数は11席で、立ち乗り4人を含む15人が乗車できる。片道1.5キロの距離を最高時速40キロで往復運行する。

 車両には、GPS(衛星利用測位システム)に加え、カメラ4台とライダーと呼ばれるレーザー光線によるセンサー式測定装置8台を搭載。これらの機器が周囲の状況や障害物を把握し、安全に走行する仕組みだ。遠隔操作機能も搭載、非常時などには外部のスタッフが運転を操作することもできる。

 現在、NTUのエネルギー研究所が利用に必要な携帯端末向けアプリ(応用ソフト)を開発中で、完成後はNTUの学生に提供する予定だ。

 NTUとナブヤは、ゴルフカートと8人乗り自動車で段階的に試験を重ねてきた。アルマが成功すれば、2018年にはさらに大型のバスで試験走行に乗り出すことも決定しているという。

 ナブヤの幹部は「自動運転車が公道を走行できる貴重な機会」と語り、NTUのエネルギー研究所の責任者も「45~50人乗りのバスに何台のセンサーやカメラが必要かを把握できる重要な試験」と述べるなど、両者は試験走行に向けた意欲をみせている。

 シンガポールでは、16年8月に世界に先駆けて自動運転タクシーの実用試験が開始されたほか、NTUが自動運転車研究の一環として歩道や屋内を自動で移動するスクーターを開発するなど、自動運転技術の実用化に力を入れている。将来的にはバスやタクシーなど公共交通機関を自動化するのが、同国政府の目標だ。

 ただ、自動運転車の実用化には安全面などで課題も多いとされる。16年10月には、実用試験中の自動運転タクシーがトラックに接触する事故が発生した。幸い事故は軽微で、試験は継続されているものの、シンガポールの取り組みがどのように推移していくのか、今後、多方面から注目を集めていきそうだ。(シンガポール支局)