訪日旅行 避難対応など「質」向上必須 足元の集客にこだわらない体質改善を
2016年の訪日外国人旅行者数は増加ペースが減速した。東京五輪・パラリンピックが開催される20年に4000万人の政府目標に向け、政府は一般住宅に有料で観光客を宿泊させる「民泊」の環境整備などを進める見通しだが、4000万人はいわば通過点。訪日旅行を世界の潮流として定着させるには、足元の集客にこだわらない体質改善が求められる。
「パスポートをなくしてしまいました」「再発行が必要ですので大使館の場所を調べます」。英語の問いかけに係員がよどみなく答える。不動産大手の森ビルが六本木ヒルズ(東京都港区)で17日行った外国人対応の避難訓練。震度6強の地震で外国人が施設内に足止めされた想定で、施設管理者らが外国人を避難場所まで誘導、身元確認や非常食配布を行った。
ホテル宿泊客の7割が外国人で商業施設にも訪日客が訪れる六本木ヒルズは、災害発生時は外国人の被災者であふれる。森ビルの八木沢浩行エリアマネジャーは「訪日客にとどまらず、東京が国際都市を目指すなら災害時の外国人対応は避けて通れない取り組み」と重要性を強調する。
政府の観光ビジョンでは文化財や公共施設を観光資源として活用するほか、民泊の推進、高速無線LANの整備など、訪日客の受け入れ環境を整備するメニューがずらりと並ぶ。16年の前年比約2割増も成果が現れた格好だが、「手数には限界もある」(観光庁関係者)との懸念もある。
「消費や雇用、対外発信につながらないインバウンド施策は本末転倒」。東洋大の島川崇教授(国際観光学)は、今後の観光施策の方向性は“数よりも質”になるとみる。ビザ緩和が訪日客急増のきっかけを作ったように「オープンな人材や地域づくりにつながる開国的な施策がもっと必要だ」と指摘する。
既に取り組みは始まっている。岡山県和気町では昨年秋、旅館や温泉施設の従業員向けに無料の英語教育を開始。温泉やサイクリングロードなどの観光資源に恵まれる同町だが、訪日客に対応できる施設や人材の不足に悩んでいた。小学校高学年まで対象を広げた「英語公営塾」も開講し、どこでも英語が通じる街づくりを目指す。
担当者は「多くの町民が訪日客に話しかけ、ふれあいが持てる。そんな居心地の良い町になれれば」と将来に思いをはせている。(佐久間修志)
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