閣内不一致どこ吹く風、「予測不可能」政権の到来 対米政策に求められるリスク管理
「米国製品を買え。米国人を雇え」。20日、連邦議会議事堂前で就任演説した米新大統領のドナルド・トランプ。その1カ月前の昨年12月28日、次期米大統領のドナルド・トランプは南部フロリダ州パームビーチの別荘で、31歳の若き大統領補佐官兼スピーチライターのスティーブン・ミラーらと就任演説の草稿を練っていた。
「トランプ氏は演説を、短くてインパクトがあるものにしたがった」
ミラーは主な歴代大統領の就任演説をひもとき、とりわけニクソン、レーガン、ケネディの演説について講義した。「トランプ氏はレーガンの自信に満ちたスタイルに魅了され、ケネディが米国を鼓舞した点をたたえた」という。
「米国民よ、大きな夢を見よう」というフレーズも検討された。ケネディの影響というよりも、どこかトランプの著書「でっかく考えて、でっかく儲(もう)けろ」(邦題)を想起させる。
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トランプ政権は、いったいどのような相貌をみせるのか。そして、米国と国際社会をどこへ導こうとしているのだろうか。その手がかりを探る試みは昨年11月、トランプが大統領選に勝利した瞬間から、あらゆる分野、さまざまな角度で繰り返されている。
政治学者のウォルター・ミードは、ナショナリズムを主張して名誉の確保を対外的にも求め、軍事力も重視した第7代大統領ジャクソンとの類似性を指摘する。反エスタブリッシュメント(支配階層)などの面は、ニクソンにも近い。
トランプの性格や言動を分析した心理学者のダン・マクアダムスも、ジャクソンとの共通項を「攻撃性と低い同調性、ナルシシズム(自己陶酔)、激しやすさ、大衆迎合」などの特徴に見いだす。
だが、大統領選の期間中、共和党の一部から「大統領に不適格」と批判されたこともあるトランプが、具体的な政策でどのように動くのか、「予測不能」なことがあまりに多い。
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厳冬のワシントン。連邦議会議事堂前の就任式典会場では、第45代大統領の誕生に対する、米国民の「喜び」と「恐怖」という相反するエネルギーが激しくぶつかり合った。就任宣誓に続く演説に、米国、そして国際社会が耳を傾ける様子は切実だ。
「トランプ氏はトランプ氏を演じている」(政治専門家)とする指摘もある中、トランプを類型化・体系化する取り組みは、一筋縄でいきそうにない。
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「米国を再び偉大にする」
すっかり定着した新大統領トランプのかけ声の根底には、「ディール(取引)で完璧に勝つ」という信条が横たわる。
米心理学者のダン・マクアダムスらが注目するトランプの言葉がある。
「人間は動物の中で最も悪質な存在で、人生は勝つか負けるかで終わる戦いの連続だ。求めるものを手に入れるまで押しまくる」
トランプの性向を歴史に照らすと、「大きなリスクをいとわず、不測の事態を招きやすい」のだという。
こうした性向は、すでに表面化している。
トヨタ自動車などへの公然たる圧力、制裁解除を引き換えとしたロシアとの核軍縮交渉、ロシアと手を組んでの中東政策転換、対中国をにらんだ台湾接近、英国の欧州連合(EU)離脱決定への強い支持…。
閣僚候補の指名承認公聴会では、トランプとの見解の相違が露呈した。国防長官候補のジェームズ・マティスがロシアは「脅威」と断言すれば、国務長官候補のレックス・ティラーソンは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を「支持する」と言った。
それでもトランプは「閣僚候補には、ありのままでいてほしいし、自身の考えを述べてほしい」と、閣内不一致もどこ吹く風だ。
トランプとは対照的な、閣僚候補の「常識的」で「教科書通り」の見解には、ある種の安心感がある。ティラーソンが、尖閣諸島(沖縄県石垣市)は日米安全保障条約の適用対象だと確認したことで、日本政府も胸をなで下ろしたに違いない。
閣僚の説得を受け入れ、トランプが過激な主張を抑えるとの期待もある。だが、最終決定権を握るのは、言うまでもなく「規格外」のトランプだ。
だからこそ問われるのは、世界の対応だ。トランプの米国に追従することだけが正しい道とは思われない。各国には自らの責任でリスクを回避しつつ、明確な理念を堅持した是々非々の対応が求められる。=敬称略(ワシントン 青木伸行)
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ついに始動したトランプ新政権の行方について、3回にわたり展望する。
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