内政はどうなる? 安保は? これがトランプ氏の政策だ
トランプ大統領就任トランプ米新大統領は、就任初日から移民や貿易問題などの重要懸案に着手し、政権を始動させた。選挙期間中から国内外で議論を呼んできたトランプ氏の政策は、どのようなものなのか。(ワシントン 青木伸行、加納宏幸、小雲規生)
■内政
トランプ氏は不法移民対策を特に重視し、薬物犯罪やテロの防止はもとより、米国民の雇用喪失を防ぐ観点からも厳しく取り締まる。20日に発表した政策集には、不法移民流入を防ぐ「壁」の建設を明記。「法と秩序」を政権運営の原則とする考えを強調した。
トランプ氏はテロ対策のためイスラム教徒を入国禁止にするとも主張してきた。就任演説では「他国の破壊行為から国境を守らなければならない」と述べ、政策集でも「不法移民、ギャングや暴力、薬物が地域社会に流入することを止めるため、国境に壁を建設する」と公約した。また、暴力犯罪歴のある不法移民を強制退去させるとした。
大統領選を通じ、トランプ氏は他候補の移民政策の手ぬるさを批判し、保守層の支持を集めた。ただ、メキシコはトランプ氏が求める壁の建設費用の負担に応じない考えで、同氏は米議会に「立て替え」のための予算措置を求めている。
一方、トランプ氏は20日、医療保険制度改革(オバマケア)の見直しに関わる大統領令に署名。厚生長官候補の承認が得られれば共和党から法案を提出し、撤廃・置き換えの同時実施を目指す考えだ。
■経済
トランプ新政権下での米国経済は、保護主義に向かう懸念が強い。トランプ氏は就任演説で、外国が米国の雇用を奪っていると改めて強調。「(経済を)保護することは偉大な繁栄と強さにつながる」と訴えた。
また、20日に発表された政策方針では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱を宣言し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も表明した。
トランプ氏はこれまで、中国が不当な補助金を企業に出して製品価格を引き下げているなどと批判。中国からの輸入品に45%の関税をかけるとしてきた。
ただし輸入への高関税は部品や商品を輸入に頼る米国内の製造業や小売業にとってはマイナス。中国との「貿易戦争」に発展すれば、公約する4%の経済成長が遠のくことは確実だ。
このためトランプ氏周辺からは、輸入抑制よりも輸出促進を重視すべきだとの声も出ている。商務長官に指名された投資家のウィルバー・ロス氏は18日の上院での公聴会で、トランプ氏と歩調を合わせながらも、「第一の目標は輸出の拡大だ」と強調した。
高関税をちらつかせつつ輸出拡大を見据えるトランプ新政権の交渉術は、今後も各国を翻弄しそうだ。
■安保
トランプ氏はまず、オバマ前政権が敵視していたロシアとの関係改善に乗り出す。プーチン大統領と早期に電話で会談する見通しで、訪露も検討されているもようだ。
トランプ氏がロシアを重視するのは、最優先課題と位置づけるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の壊滅に向け、米露で共同戦線を張る構想を描いているためだ。
だが、欧州諸国にはトランプ氏への嫌悪感が強く、米露接近に対する警戒感もある。トランプ氏がロシアとの共闘に踏み切れば、現行の有志連合国によるIS掃討作戦の枠組みは、変容を余儀なくされる。
中国との緊張は当面、高まったままとなりそうだ。ロシアとの関係改善には、対中牽制(けんせい~という意味合いもある。トランプ政権は発足早々、最新ミサイル防衛システムの開発を表明したが、これは北朝鮮やイランのみならず、中国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も想定したものだとみていい。
対北朝鮮外交では北朝鮮と中国に圧力をかける構えだ。一方で、北朝鮮とのディール(取引)に乗り出すかも注目される。
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