中国、貿易協定で盟主狙う 米国のTPP離脱に安堵 アジア主体のRCEP推進
【北京=西見由章】トランプ米大統領が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)脱退を正式表明したことについて、TPPを米国主導の“中国包囲網”ととらえてきた中国国内では、一定の安堵(あんど)感をもって受け止められている。また、米国の空白を埋めてアジア太平洋地域の貿易ルールを主導し、政治的影響力を拡大する好機との期待も生まれている。
米国の脱退を受けて、オーストラリアなどTPP参加国からは中国の参加を求める声が出始めた。中国国際問題研究院の滕建群・米国研究所長は24日、海外メディアの記者との懇談会で「今後もし、TPPの再協議が行われたり中国が参加を求められたりするならば、中国は参加すべきだ。妨げるものは何もない」と言い切った。
一方、中国外務省の華春瑩報道官は同日、米国のTPP離脱を受けて米国が参加していない東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を推進すると強調した。アジア太平洋経済協力会議(APEC)メンバーの参加を想定したFTAAPの実現に向けて、TPPに代わりRCEPをその土台にする意欲を示した形だ。
いずれにせよ、世界第2の経済規模を誇る中国が、多国間貿易協定の主導権を握るシナリオが現実化しつつある。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は25日付社説で、トランプ米政権が今後、台湾問題や南シナ海問題を利用して中国に2国間貿易における譲歩を迫ると予測し、「TPPの死」を祝福している場合ではないとしつつ、「トランプ氏が世界秩序にもたらす混乱は、必ず同盟国の米国への信頼を低下させる。これは中国にとって関係改善や問題解決のチャンスだ」とし、中国がアジアで政治的影響力を拡大させる好機との見方を示した。
ただ、中国主導の貿易ルールづくりには各国から多くの疑念も生じている。米紙ウォールストリート・ジャーナルは25日付の社説で、習近平国家主席がスイス・ダボスで自由貿易体制を提唱したことについて「水がワインになる奇跡」と皮肉り、中国の実態は自国の輸出産業を保護、育成する重商主義と自由貿易の「混合」だと指摘した。
さらに、今後のアジアにおける多国間貿易協定も「間違いなくそのパターンを繰り返すだろう」と分析している。
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