マイナス金利新局面 日銀決定会合、トランプリスクも議論へ

 
黒田東彦日銀総裁

 日銀は30日、金融政策決定会合を開いた。昨年1月の決定会合で、マイナス金利政策の導入を決めてから1年が経過。日銀は昨年9月に始めた長期金利の操作と併せ、「世界の先駆け」(黒田東彦総裁)と自負する新しい枠組みの下、腰を据えて「デフレ退治」に挑む。だが、ここに来て米国金利が急上昇するなど、トランプ米大統領の動向が日銀に揺さぶりをかけ始めた。日銀は新たな局面を迎えようとしている。(米沢文)

 日銀の狙い通り、マイナス金利政策により住宅ローンや企業向け融資の金利は大きく低下した。全国銀行協会によると、昨年の全国116行の貸出金は前年比2・3%増の10兆8695億円となり、6年連続のプラス。社債市場も活発化した。

 ただ、マイナス金利に対する銀行界の評価は冷ややかだ。全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)は「実体経済へのプラス影響はまだ多くはない」と話す。

 最大の誤算は「超長期の金利の極端な低下」(日銀幹部)だ。一時払い終身保険の販売停止や退職給付金債務の増加が問題になり、家計の心理にも悪影響を及ぼした。日銀は上場投資信託(ETF)の買い入れ増加などてこ入れを図ったが、2%の物価上昇率の目標に近づくことはなかった。

 このため日銀は昨年9月、金融政策の「総括的な検証」を行い、マイナス金利と国債の大量購入を中心とする従来政策を見直した。新たに長期金利を0%程度に誘導する目標を設定し、当面は年80兆円をめどに国債買い入れを維持する方針を示した。

 だが、日銀の新たな施策の前に、トランプ政権の政策影響が立ちはだかろうとしている。昨秋からの「トランプ相場」では長期金利に上昇圧力がかかり、27日には、国債の購入を増やす措置も行った。今後はトランプ大統領がドル高是正のため、日銀を標的にする懸念もある。

 日銀は31日までの決定会合で、経済成長率見通しの引き上げなどを検討する。マイナス金利の波及効果や「トランプリスク」についても議論する見通しだ。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「物価上昇率の1%台の定着が見えてくる10月に長期金利目標を0・3%に引き上げ、長期金利急騰のリスクが高い場合は同時にマイナス金利をマイナス0・2%に深掘りする可能性がある」と予測する。