トランプ氏「ドル高牽制」に戦々恐々 日銀、金融政策批判を警戒

 

 日銀が31日に公表した展望リポートで実質成長率の見通しを引き上げたのは、金融緩和の効果に加え、トランプ米大統領の政策への期待から進む円安株高が追い風となっているからだ。ただ、足元ではトランプ氏の保護主義的な貿易政策や、移民政策への警戒感が顕在化し、市場は乱高下している。トランプ氏はドル高牽制(けんせい)の動きも見せており、日銀の金融政策にもその矛先が向かえば、悪影響は避けられない。

 「強力な緩和効果を発揮している、必要かつ適切な政策だ」。同日の金融政策決定会合後の記者会見で日銀の黒田東彦総裁は、マイナス金利政策と併せて昨年9月に始めた長期金利を0%程度に操作する枠組みの成果を強調した。黒田総裁は「金融政策は為替レートの水準や安定を目標にしていない」と強調するが、米国の長期金利が上昇するなか、日本の長期金利が低く抑えられることで、日米の金利差が拡大し、円安ドル高が進んでいることが大きい。

 為替相場は、トランプ氏が大統領に当選した昨年11月8日に1ドル=105円台だったが、その後1ドル=118円台まで円安が進んだ。だが足元では、トランプ氏の移民政策をめぐる混乱を受け、31日の東京外国為替市場では1ドル=113円台で推移し、前週末に比べ1円以上も円高に振れた。

 日銀は円安ドル高によって、輸出企業を中心に企業収益が回復し、収益の一部が賃金上昇に回ることで、人々が消費を増やし、結果として物価が上昇するという好循環を事実上目指している。トランプ氏の政策で今後円高ドル安が進めば、2%の物価上昇率目標の達成時期がさらに後退するリスクもはらむ。

 10日の日米首脳会談で、為替レートへの言及があるのではないかとの警戒感も出ている。トランプ氏が2国間の貿易協定に通貨安誘導を制限する為替条項を導入する意向を示したからだ。貿易不均衡の是正を目指すトランプ氏から、足元で進む円安ドル高や日銀の金融政策に批判が飛び出せば、一転して急速な円高ドル安が進みかねない。

 市場からは「日銀の金融政策が近い将来変更されるかどうかは、ひとえに為替次第」(みずほ証券の上野泰也氏)といった指摘も出ている。(永田岳彦)