安倍首相、トランプ氏の為替批判は「当たらない」 世界巻き込む通貨戦争の火種
トランプ米大統領が日本の為替政策を名指しで批判したことに対し、日本政府は1日、円安誘導は行っていないと反論した。トランプ氏の相次ぐ口先介入は急速な円高などを引き起こし、日本経済に打撃を与えかねない。基軸通貨のドルを抱える米国があからさまにドル安誘導を行えば、従来の国際協調を形骸化させ、“通貨競争”を引き起こす懸念もある。
「(円安誘導の)批判は当たらない。必要があれば説明する」
安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会でこう述べ、10日の日米首脳会談で取り上げる可能性に言及した。
浅川雅嗣財務官も財務省で記者団に対し、「ドル円相場は市場で決まっており、操作しているわけではない」と強調した。
足元の円安ドル高は米景気の拡大などで米国の長期金利が上昇し、日米の金利差が広がった影響が大きい。トランプ氏は日銀の金融緩和を円安誘導と捉えているとみられるが、政府は「デフレ脱却という国内政策が目的で、為替を念頭に置いたものではない」(浅川氏)と反発する。
日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)などは通貨安競争の回避で一致してきた。背景には1930年代に各国が通貨安を競い、保護主義が広がったことで世界恐慌を悪化させた教訓がある。
だが、トランプ氏は自国製品の輸出に障害となるドル高の是正に意欲を燃やし、中国や日本など貿易相手国をやり玉に挙げる。
米国家通商会議のナバロ委員長もドイツを念頭に「(ユーロは)過小評価されている」との認識を示し、これにドイツのメルケル首相が反発。世界を巻き込んだ通貨戦争の火種がくすぶり始めた。
みずほ総合研究所の有田賢太郎主任エコノミストは「過度な米国の口先介入で他国の為替が急激に動くと、グローバルの金融市場が不安定になるリスクがある」と警鐘を鳴らす。
トランプ氏の牽制(けんせい)により、日本政府は過度な円高が進んだ場合も介入に動きにくくなったといえる。米国は今後、貿易などの2国間交渉で好条件を引き出そうと為替操作国指定などのカードをちらつかせてくる懸念もある。
円高は輸出企業などの業績を悪化させ、デフレ脱却にも水を差しかねない。安倍首相は10日の首脳会談で、日本の為替政策を説明し、トランプ氏の口先介入を抑えることができるかが非常に重要になる。(田村龍彦、西村利也)
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