カンボジア、6.9%の高成長維持 17年版世銀報告書 「プラスワン」効果も

 
世界遺産に登録されたカンボジアのプレアビヒア遺跡。タイとの国境紛争は沈静化したが、観光インフラが整うにはまだ時間がかかりそうだ=北部プレアビヒア州(木村文撮影)

 世界銀行は1月10日、2017年版の「世界経済見通し」を発表した。カンボジアを含む東アジア・大洋州の域内経済成長率を15、16年よりも低い6.2%と予測したが、カンボジアについては、6.9%の高い成長率を引き続き維持すると予測した。

 世界全体の経済成長率については2.7%と「緩やかに加速する」と予測。先進国の経済成長率も1.8%と小幅ながら上昇するとしている。背景には、一次産品を輸入する新興国・途上国で内需が堅実に推移していることがあると指摘した。

 東アジア・大洋州は、14年の6.7%、15年の6.5%、16年の6.3%(予測)からさらに下落傾向にある。域内で国内総生産(GDP)最大国の中国の成長鈍化が原因だが、域内の他国の成長によって緩やかな減速にとどまり、18、19年には6.1%の伸びを維持するとみられる。

 カンボジアは、14年の7.1%、15年の7.0%、16年の7.0%(予測)とやはり微減しているものの、域内ではラオス、ミャンマー、フィリピンと並ぶ高成長率を維持している。

 世銀の報告書は、カンボジアの高度成長の要因について、好調な輸出と、主に中国や日本からの外国直接投資額が堅持されていることを挙げる。さらに、中国などから生産拠点を他国に移転させる「チャイナプラスワン」の効果が今も続いていると指摘する。

 ◆新たな生産拠点に

 カンボジアでは、隣接するタイから企業が生産拠点を移してくる「タイプラスワン」もすでに始まっている。タイ国境のコッコン州や、バンテイミエンチェイ州のポイペトを中心に、移転企業を受け入れる経済特別区の建設が相次いでおり、日系企業の移転もみられる。

 報告書によると、外国直接投資は東アジア・大洋州全体で上向きになってきている。特にその恩恵を受けているのは、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、タイ、ベトナムだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体の発足や、タイ、ミャンマーなどの政治的な安定性が、外国直接投資を誘引しているという。

 ただ、カンボジアの現地紙プノンペン・ポストによると、カンボジア経済の先行きは必ずしも楽観視できない。例えば、建設業は「右肩上がりではない」との指摘もある。カンボジアの国土管理・土地計画・建設省は、建設・不動産業の売上高が15年の約9億ドル(約1017億円)から16年に約7億2000万ドルへと2割減になったと1月半ばに発表した。

 一方で、建設・不動産分野への投資認可額は15年の約33億ドルから16年は85億ドル余りへと大幅に伸びた。同紙にコメントした専門家は「16年には建設・不動産業は明らかに鈍化しており、投資認可額の増加は、実態を反映しているとは言いがたいのではないか」と疑問を投げかけた。

 ◆観光収入が減少

 建設・不動産業とともにカンボジアの経済成長を牽引(けんいん)する観光業は、来訪客が増えたにもかかわらず観光収入が減ったという現象が起きている。プノンペン・ポストによると、16年にカンボジアを訪れた外国人客は500万人を突破して前年比5%増となった。しかし、観光収入は前年の約35億ドルから約30億ドルに減少している。

 北西部のアンコール遺跡群やタイ国境にあるプレアビヒア遺跡など、世界遺産を擁するカンボジアは、国際的にも旅行人気があり、隣国のベトナムやタイ、中国や韓国からの観光客が大半を占める。日本も昨年9月に首都プノンペン-成田間の直行便が就航したことで観光客の増加が期待されている。

 ただ、国内の観光資源の魅力を十分に生かすための交通インフラや宿泊施設などの整備がまだ追いついていない。カンボジア政府観光省は観光客数だけでなく、観光収入も引き上げるためには「官民が手を携えて、観光の質を高める取り組みをする必要がある」と強調している。

 カンボジアは、引き続き高度成長が見込まれる。しかし、インフラ整備の後れなど国内のさまざまな課題に加えて、18年には5年に1度のカンボジア国民議会選挙が実施され、ASEAN域内で首相在任期間が最長となったフン・セン首相の信が問われる。また、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任した米国の動向など、国際的な政治経済の揺らぎがカンボジアにどのような影響を与えるのかといった不透明要素もある。17年はカンボジア経済にとって予断を許さない1年になりそうだ。(カンボジア邦字誌「プノン」編集長 木村文)