韓国製の空気清浄機もダメ!? 中国の“韓流”締め出しがとまらない THAAD配備の報復か

 

 世界の韓流ファンが6000万人に肉薄し、韓国の全体人口を上回ったと、韓国メディアが先月末にいっせいに報じた。「勢い増す韓流」などと見出しが躍る一方で、中国政府が、韓流スターの中国での活動を規制する「限韓令(韓流禁止令)」をちらつかせる。昨年夏の米軍による高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備決定の発表の影響とみられ、こうした“韓流”の締め出しは、空気清浄機など韓国製品にまで拡大しているという。日本では韓流ブームが下火になって久しいが、韓国政府はいまなお韓流をひっさげ、訪韓外国人客増などの世界戦略を練る。

「勢い増す韓流」は本当か

 先月末、聯合ニュースや中央日報(いずれも日本語電子版)など複数の韓国メディアは、韓国国際交流財団が発刊した報告書「2016地球村韓流現況」を引用し、世界の88カ国・地域で韓流同好会1652団体が結成され、その会員数が前年比約2400万人増となる5939万人に達したと報じた。つまり、韓国の人口(約5169万人)を上回ったことになる。

 韓流同好会の会員数を地域別にみると、昨年に大ヒットした韓国ドラマ「太陽の末裔(まつえい)」(原題)が中国でも人気を集めたことで、アジア・オセアニアが4010万人を超えたとしている。欧州は1000万人を超え、米国・中南米は900万人、アフリカ・中東は19万人と集計された。

 景気のいい数字に喜び、韓国紙、朝鮮日報(日本語電子版)は、聯合ニュースの記事を使って「勢い増す韓流」の見出しをつけた。そしてこの報告書は、韓流を今後リードする分野として美容とウェブ漫画を挙げている。韓国ブランドの化粧品が輸出され中国、米国などの消費者の生活に浸透し、日本では昨年、ウェブ漫画を原作とした韓国ドラマ「ミセン-未生-」のリメーク版が放送されたことを好材料としたようだ。

THAAD配備で「貿易報復」も

 一方で、聯合ニュースによると、今回の報告書は米国によるTHAADの韓国配備に対抗した中国当局の「韓流締め出し」が韓流コンテンツ輸出の妨げになってはならないと指摘。中国側の規制がいつまで続くか分からないが、政府レベルの対応が必要になったとしたうえで「中国政府の規制緩和、韓国コンテンツの著作権保護などに必要な協議を持続的に試みるべきだ」と訴えている。

 だが、中国側の韓流締め出し拡大は止まらない。韓国製品の締め出しにまで広がっているというのだ。これまで韓流ミュージシャンやタレントのイベント取り消しなどが伝えられてきたが、韓国メディアは他の分野にまで拡大しつつあると報じている。

 KBSラジオ(日本語電子版)によれば、中国政府が韓国製の空気清浄機についても大量に不合格処分にしていたことが判明したという。不合格処分を受けたのは、LG電子やシニルなど韓国メーカーの空気清浄機4製品を含む8製品で、昨年12月に不合格処分を受けたとしている。

 不合格の理由として、中国当局は安全性と性能不良をあげているが、不合格となった製品のなかには、中国で販売していない製品も含まれており、THAAD配備に伴う「報復」との見方もある。

いまなお韓流をひっさげる強気の意味は

 それにしても韓国の韓流に対する期待はとてつもなく高い。たとえば、THAADの韓国配備決定の発表後、中国政府が「報復」として韓国旅行を制限しているとされるため、韓国側が注目し始めたのがタイやインドネシアなど東南アジアの国々。韓国ドラマなど韓流を拡散させるによって中国人以外の訪韓客を取り込もうとしているのだ。

 日本国内では韓流ブームは下火になって久しい。大みそか恒例のNHK紅白歌合戦に韓国勢は5年連続で選ばれなかった。飽きられたのだ。

 それでも韓国側はかなり楽観的だ。中央日報によれば、前出の報告書「2016地球村韓流現況」は日本の韓流事情にも触れているという。

 それによると、「反韓感情の高まりで、K-POPのようにかつて脚光を浴びた韓流ジャンルへの反応が例年に比べやや鈍化したようだ。だが、日本国内の韓流分野の多様化とともに、各分野別の同好会数も増加する様相を示していることから、コンテンツの多様化を通じて日本国内における韓流の成長可能性を期待することができる」と指摘する。

 果たしてこの分析は正しいのだろうか。