NAFTA再交渉 日系企業のメキシコの優位性損なう恐れ
北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉でトランプ政権が輸入品へのゼロ関税を見直せば、米国向け輸出拠点としてメキシコに進出した日系企業は安い人件費で生産できる現地の優位性が損なわれる。
メキシコには、自動車メーカーを中心に多数の日系企業が進出している。関税を撤廃したNAFTAの恩恵を生かし、安い人件費で生産した製品を巨大市場の米国に送り込んできた。
現地に工場を構える日系自動車大手は4社で、2015年度は計約135万台を生産した。うち6割(約83万台)を占める日産自動車のカルロス・ゴーン社長は「NAFTAのルールが変わるなら適応するまで」と平静を装う。ただ、JPモルガン証券の試算では、日産の営業利益は乗用車の関税が5%上がれば384億円減少する見通しで、協定見直しの影響は大きい。
大口取引先の自動車大手に合わせ、電機や素材メーカーも相次いで進出した。自動車用電装部品などを生産する三菱電機の松山彰宏専務執行役は「関税問題が出ると生産拠点の見直しを迫られる可能性がある。人件費や関税の動向を吟味する」と話す。
旭硝子はメキシコ中部で約50億円をかけ自動車用ガラスの新工場を建設し、16年4月に本格生産を始めたばかり。「自動車メーカーの姿勢が変わるとは考えていない」(島村琢哉社長)と必要に応じて生産を拡大する方針だが、取引先の動向に神経をとがらせる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の試算では、米国の関税が6%以上だと現地生産のメリットが失われる。トランプ氏は海外移転した企業の製品に35%の関税を課すとしており、進出企業の大きな懸念材料になる。
しかし、米国は乗用車の関税を2.5%超にすれば世界貿易機関(WTO)協定違反で訴えられるため、最終的に断念するとの見方もある。
「巨額の投資が必要な生産拠点を安易には動かせない」(経済官庁幹部)とあって、各社は交渉の行方を固唾をのんで見守っている。
関連記事