トランプ流に韓国「次の標的」と戦々恐々 THAAD配備不透明、米韓FTAにも矛先?

 
トランプ米大統領(UPI)

 トランプ米大統領は、韓国の黄教安首相との電話会談で、核・ミサイル開発を推し進める北朝鮮に対し、断固たる措置を取る意思を示した。しかし、韓国で朴槿恵大統領の職権が停止され、国政が停滞するなか、「米国優先」を掲げるトランプ流の経済政策に韓国は戦々恐々としている。

 トランプ氏が北朝鮮を優先的に対処すべき「脅威」とみなしているのは、マティス国防長官が初の外遊先として韓国と日本を訪問することに如実に現れている。米国の歴代国防長官は中東やアフガニスタンを最初に訪れることが多く、韓国外交筋は「慣例を破った破格の対応」だと受けとめている。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を示唆。マティス氏は、北朝鮮への先制攻撃も辞さない姿勢をみせている。

 だが、米韓の防衛協力を象徴する米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備は、野党の反発に遭い、朴氏の弾劾審理次第で5月にも想定される大統領選後も配備方針が維持されるかは不透明だ。

 トランプ氏が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱などを次々打ち出すなか、韓国の経済界では「次の標的は韓国だ」との不安も広がる。選挙期間中、トランプ氏が米韓自由貿易協定(FTA)に関し、「米国の雇用を奪った」と否定的な見方を示していたからだ。

 韓国政府は26日、対外経済閣僚会議で、米国産シェールガスを年間280万トン輸入するほか、米国からの航空機や航空機部品の輸入拡大を検討する方針を決めるなど、さっそくトランプ政権におもねる姿勢をみせている。

 中国がTHAAD配備問題で経済的報復をちらつかせるなか、米中との貿易に過度に依存してきた経済構造を見直すべきだとの声も上がっている。経済紙は、頓挫してきた日本とのFTA交渉に目を向ける必要があると強調している。(ソウル 桜井紀雄)