中国企業の対外投資急増と人民元安圧力
データで読む中国は「引進来」と呼ばれる外資導入政策を原動力として高度成長を遂げたが、2000年代後半には、中国企業の潤沢な資金を対外投資に振り向ける「走出去」へ軸足を移した。これを受けて、中国から外国への直接投資(新規投資から投資回収を除いたネット)は徐々に増加し、外国から中国への投資が頭打ちとなる中で、15年にはこれを上回った。
次に、金融・資本取引をみると、短期的に変動する証券投資や貸し出しは14年から流出基調となっている。背景には、中国経済の減速や米国の金融緩和が終わるとの観測があったが、人民元が15年半ばから対ドルで下落に転じると、ドル建て資産への逃避を目的とする資金流出が生じ、一層の元安を招くこととなった。中国人民銀行(中央銀行)は外貨準備を用いた人民元買い・ドル売りで対抗しており、年明けは米大統領選後のドル高一服もあり、資金流出・人民元安の動きはいったん収まった。
しかし、今後もトランプ米大統領への政策期待や米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにより米国金利の上昇が見込まれており、予断を許さない状況が続く。一部報道によれば、中国政府は、昨年11月末から大型の対外投資や不動産、エンターテインメントなどの対外投資に対する規制を厳格化した。また、年明けには個人の外貨両替についても詳細な審査を求めることとなった。
中国は、資本取引の自由化や人民元の国際化を目指しており、海外進出(走出去)の基本方針も変えていない。外国投資家を含めた一律の規制は当局の威信を損なう可能性があるため、中国企業の対外投資や中国人の海外送金に対して公式・非公式の両面から制限を課しているものとみられ、人民元の安定と国際化の両立を目指す中国政府は難しいかじ取りを迫られている。(編集協力=日本政策投資銀行)
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