為替操作批判、堂々と反論を トランプ政策、篠原尚之元財務官に聞く

 
インタビューに答える篠原尚之氏

 「米国第一」を掲げるトランプ米大統領は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱など保護主義を鮮明にし、貿易赤字の解消やドル高是正を訴えている。世界経済や金融市場に影響を与えるトランプ政権の政策をどう分析し、日本はいかに対応していくべきか、元財務官の篠原尚之東大教授に聞いた。

 慌てる必要ない

 トランプ政権は選挙中に打ち出した計画を実行しようと努力しているが、ホワイトハウスの一部の人間でやっている。(難民・移民の受け入れ停止を決めた大統領令など)やり方が拙く、心配だ。

 トランプ大統領の発想はマルチ(多国間)ではなくバイ(2国間)で、頭にあるのはアメリカの雇用だ。(中国や日本を通貨安誘導として批判したのも)フォードとか、個々の米国企業の競争力の観点から来ている。

 (日本を「為替操作国」に指定する可能性は)“脅し”としてないとはいえないが、日本は従来の意味での為替操作をやっていない。市場介入をしていないし、金融政策もデフレ脱却のためにやっている。正々堂々と反論していくしかない。

 (中国も含めて)操作国に指定されれば関税の引き上げまでいく。世界経済全体にダメージを与えかねない。

 為替の話は財務長官をはじめ米財務省の体制が固まってから、議論を積み重ねていく方がいい。

 トランプ政権はまだ人が入ってきていないから、慌てる必要はない。経済政策の司令塔もはっきりしていない。(米大統領の任期である)最低4年は政権が続くわけだから、日本は手柄を急がないことだ。

 双方の利益訴え

 (10日の日米首脳会談で重要になるのは)両国の経済関係が順調であることはお互いにとって望ましい、というメッセージを出すことだろう。日本政府は貿易は双方にメリットがあり、いいことだと言い続けるしかない。

 今の段階で、トランプ氏に自由貿易やTPPが大事だといっても馬の耳に念仏だ。首脳同士の信頼関係の構築は重要だが、トヨタ自動車を何とかしてくれとか、付け入れられるのが困る。

 米国が本当に何をするのかを見極めなければ、軽々に(日本によるインフラ投資など)“お土産”を出しても仕方がない。トランプ大統領が掲げる雇用の拡大は容易ではなく、いずれ困った状態になる可能性がある。中国に貿易問題でどう出るかも見えていない。

 悪いシナリオはトランプ氏が進める景気刺激策のプラスより、貿易問題によるマイナスが大きくなってしまうことだ。米国の株価も積極財政や規制緩和に対する期待で上がってきたが、貿易摩擦の話が出てくると頭打ちになるだろう。