プレミアムフライデーを国民行事に 経団連副会長・石塚邦雄氏

経財論

 最近の若者は「買いたいモノがない」と言う。そもそも「消費を楽しむ」という意識自体が希薄になっている。そうでなくても、将来の不安などを理由に消費を控える傾向は強まるばかりだ。長いデフレに慣れてしまった日本社会にとって、国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費を増やすことは、最も困難な課題の一つである。

 消費マインドを上向かせるために、将来の不安の払拭などに全力で取り組む必要があることは言うまでもない。加えて、経済の好循環を生むために、誰かが消費のスイッチを押さなければならない。サービス提供側が創意工夫を発揮し、新たな需要の創造に挑戦することが求められている。

 こうした中、人々にさまざまな楽しみ方を見つけて、もっと人生を豊かに過ごしていただきたいという思いから、今般、「日本再興戦略2016」の官民戦略プロジェクト10の一環として、プレミアムフライデーという取り組みを新たに導入することにした。

 ◆新たなライフスタイルを提案

 取り組みの狙いは、毎月の月末金曜日に、いつもより少し早めに仕事を終わらせることで、ちょっと豊かな時間、すなわち一人一人にとって「プレミアム」「サムシング・スペシャル」と感じる時間を過ごす習慣をつくり出すことにある。消費マインドを上向かせるだけでなく、働き方の見直しも含めた新たなライフスタイルを提案している。

 今週金曜日の24日に初回を迎えるが、仕事を効率良く片付けたら何をして過ごそうか、と考えるだけでワクワクするという読者も少なくないと思う。買い物、外食、旅行、お稽古事、スポーツなど、同じ時間でも過ごし方は人の数だけある。

 プレミアムフライデー実施期間中、街には統一ロゴマークがそこかしこにほほ笑み、非日常感を盛り上げる。今回、プレミアムフライデーの実施を正式に打ち出してから約3カ月間という非常に短い準備期間であったにもかかわらず、既に多くのイベントの開催や期間限定商品の販売などの準備が進んでいる。予定されている数々の多彩な企画を見ると、サービス提供側の創意工夫が随所に盛り込まれ、実にワクワクさせられる。

 ◆働き方改革も推進

 経団連は、プレミアムフライデーの趣旨に全面的に賛同・推進し、昨年12月、全会員にプレミアムフライデー実施期間中の柔軟な働き方の推進への協力を呼び掛けた。具体的には、プレミアムフライデー当日の半日有給休暇(全日・時間単位を含む)の取得促進をはじめ、終業時間の前倒しやフレックスタイム制の活用など、各社で工夫することで、社員が月末金曜日の午後は定時より早めに、できれば遅くとも午後3時までに仕事を終えられるよう、お願いしている。

 各社の実情に応じて、できる限り前向きな対応が進むことを期待している。半日・時間単位の有給休暇制度やフレックスタイム制度の積極導入といった制度的な環境整備に加え、職場単位で業務の無駄を減らし、効率的な仕事の仕方を考えるきっかけになるとよいと思う。企業と社員が一体となって早く帰れる職場環境をつくっていくことも、働き方改革全体の実効性を高めるためには欠かせないからだ。

 賛否両論があることは承知しているが、月末金曜日の過ごし方を契機に、多様な働き方・休み方の実現に向けたアクションにつながることを期待している。

 プレミアムフライデーは3月以降も毎月実施していく。回を重ねるごとに徐々に浸透し、いずれバレンタインデーやハロウィーンのように、誰もが知っている国民的行事にしていきたい。「月末の金曜日はプレミアムフライデーでしょ。早く帰って遊びに行こう!」が常識となる日も遠くない。さぁ、皆さんも一緒に、新しい習慣をつくっていこうではないか。

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【プロフィル】石塚邦雄

 いしづか・くにお 東大法卒。1972年三越入社。人事や企画部門を中心に歩み、2005年三越社長。08年に三越伊勢丹ホールディングス社長兼COOに就任。12年から会長。16年6月から経団連副会長、生活サービス委員長を務める。