27日からRCEP事務レベル会合 TPP絶望でアジア標準も
日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の事務レベル交渉会合が、27日~3月3日に神戸市で開かれる。自由貿易に後ろ向きなトランプ米政権発足後初の会合で、交渉を加速できるか注目される。ただ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効が絶望的な状況下で、RCEPだけが先行すれば中国型の貿易ルールが“アジア標準”になる恐れもある。
「世界的に保護主義の風潮が強まる中、開放的で質の高い貿易投資ルールの合意が極めて重要だ」
世耕弘成経済産業相は24日、東京都内で開かれた首席交渉官の非公式会合で交渉の進展に期待を示した。
RCEP交渉は2013年に始まり、事務レベル会合は今回で17回目。全15分野のうち、昨年までに「経済技術協力」「中小企業」の2分野で合意している。
ただ、焦点となる関税分野では、中国やインドが農産品の市場開放に強く抵抗している。また、企業の投資をしやすくする貿易ルール作りでも、知的財産の保護や、競争環境を歪める国有企業の優遇措置を禁じる措置などでの隔たりが大きい。
今回の交渉は、このほか電子商取引や通関の円滑化などを含む残り13分野全てを協議するが、いずれも合意には至らない見通しだ。
一方、議論の鍵を握るのが、域内最大の経済規模を持つ中国の存在だ。アジアで覇権主義的な傾向を強める中、「RCEPを早期に妥結し、アジア太平洋や世界経済の原動力にすべきだ」(中国外務省)と交渉を主導する構えをみせる。
中国は国有企業の独占や外国企業への介入を許さない透明な貿易ルールの導入に慎重だ。域内の中核を担うASEANも、タイなど新興国とカンボジアなど発展途上国との間で経済格差が大きく、発展度合いに応じた緩やかな協定を目指す。
これに対し、日本は域内で活動する日系企業の活動を円滑にするためにも、TPPの合意内容を交渉の座標軸に据えて高いレベルの自由化を実現したい構え。交渉では「中国にだまされないように目を光らせる」(通商筋)のが役割だ。
とはいえ、米国のTPP離脱により、日米でアジア太平洋の貿易秩序を築き、中国包囲網を張る日本の戦略は行き詰まった。「米国第一」を掲げるトランプ政権の影響で保護主義が広がれば、世界経済の縮小均衡を招きかねない。日本はRCEPの大筋合意を急ぎ、多国間協定の意義を訴える必要にも迫られている。
折しも今年はASEAN創設50年の節目だ。域内では「交渉を長引かせる余裕はない。17年内に妥結させねばならない」(インドネシアのエンガルティアスト・ルキタ貿易相)と早期合意の機運が高まっている。
日本は「安易な妥協はしない」(経済官庁幹部)と自由化の水準にこだわる。
中国主導の枠組みにのみ込まれないため、域内で発言力が強いASEANなどと共闘体制を組み、交渉を牽引(けんいん)する必要がありそうだ。(田辺裕晶)
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■RCEP交渉の焦点
・関税
中国やインドは農産品などの大幅引き下げに慎重。日本は高いレベルの自由化 を目指す
・貿易ルール
中国などが知的財産の保護や国有企業の優遇禁止に抵抗
・合意時期
ASEANは創設50周年の今年中に大筋合意を目指す。日本は安易な妥結に 慎重
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【用語解説】東アジア地域包括的経済連携(RCEP)
日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、韓国、インドのほか、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国による経済連携協定(EPA)。広い枠組みで自由化を進め、域内の経済成長につなげる狙いがある。実現すれば、世界の国内総生産(GDP)の約3割、人口の約半数を占める巨大な経済圏となる。
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