「交通戦争」プノンペンで路線拡大 公共バス運営改善へ日本が援助
カンボジアの首都プノンペンで日本の援助による公共バスの運営改善プロジェクトが1月に始まった。経済発展とともにプノンペンの渋滞は悪化する一方で、交通事故の被害も増えている。公共交通の導入が事態改善の切り札とされているが、都市化のスピードになかなか追いつけない。
車両やインフラ整備
プノンペン都では現在、都のバス公社がバス3路線(総距離54キロ)を運行している。バス公社は日本の国際協力機構(JICA)の援助による社会調査などを経て2014年に設立された。
しかし、路線や走行区間が短く利用しにくいのが実情だ。プノンペン住民の移動手段は、自家用車、バイク、バイクに座席付きの荷台をつけた「トゥクトゥク」と呼ばれる乗り物が中心で、基本的に出発点から目的地まで直行する。乗り合いバスを利用する習慣がなく、運行を始めたバスも認知度はいまだに低い。
さらに、バス車両の故障や交通渋滞により、運行率は各路線とも60~80%と、運行時間が安定しないことも利用しにくい一因だ。バス公社の15年の売り上げ実績は約50万ドル(約5658万円)で、年間の運行コストの約170万ドルを大幅に下回っており、このままでは事業の継続が難しい。
そこでプノンペン都は、JICAの技術協力プロジェクトを活用し、バスの運営改善に乗り出す。このプロジェクトでは、20年までの間に現在の3路線を、10路線・14系統(総距離143キロ)に拡大する。
第1段階として、18年までに5路線・9系統(総距離86キロ)に延長し、日本から80台のバス車両を調達する。事業規模の拡大に合わせて、現在の運転手も含めて合計190人の運転手と車掌を確保するとともに、車庫や整備工場、バス停の整備なども実施するという。バス車両は日本のほかに中国からも100台の支援を受ける予定だ。
ただ、バスの良好な運行には、道路など交通インフラの整備も必要となる。プノンペン都の普通車・大型車の登録台数は1990年の4000台から2012年には26万8000台に、バイクは同じく4万4000台から95万1000台に増加した。
駐車場が著しく不足するプノンペンでは、路上駐車で道路の半分が埋まり、車両の通行が妨げられることもしばしばある。プロジェクトでは、駐車禁止マーキング、路上駐車スペースの標識掲示、バス停留所のマーキング、公共交通優先信号の設置などの措置を優先度の高い路線で実験的に行う。
IC定期券など検討
また、公共交通政策、運行管理、車両整備、運転技能訓練など多岐にわたる分野で13人の専門家が派遣される。プロジェクトを率いる国際開発センター(東京都港区)の高橋君成さんによると、自家用車やバイクなどから公共交通のバスへの利用転換を促すため、理想的な交通手段の利用を促す「モビリティ・マネジメント」の専門家も交えてバスのイメージアップや認知度を高めるブランディングにも取り組むという。
同様に日本の援助でバスの運行に取り組んでいるラオスの先行事例も参考に、バスの運行状況をスマートフォンで確認できる「バスロケーションシステム」や「ICカード」によるバス定期券システムなどの導入も検討していく。
プノンペン都では、日本の援助により信号機の設置も進んでいる。JICAによると、都内合計100カ所で信号機が交換、新設され、新たに整備される交通管制センターと光ケーブルで結ばれる。
日本の1950~60年代の「交通戦争」を思わせるともいわれるプノンペンの交通問題。プノンペン都は2035年を目標とする「総合交通計画プロジェクト」によって、拡大を続ける都市部の交通インフラ整備に取り組む。日本の経験を生かした援助で交通インフラが改善され、多くの人にとって住みやすい街へと変わっていくことを期待したい。(カンボジア月刊邦字誌 「プノン」編集長 木村文)
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