大型公共事業、被災地に影 復興前進も将来の維持費不安 公営住宅の空室多発も

 
かさ上げ地で大型商業施設を中心とした町づくりが進む岩手県陸前高田市=2月

 東日本大震災の津波被害に遭った沿岸部では、災害公営住宅や防潮堤、道路など復興に欠かせない大型公共事業が続いている。しかし被災市町村の大半は人口が少なく、財政力も弱い。インフラ整備が進むにつれ、自治体からは「将来、維持していけるのか」との不安が漏れ始めた。

自治体税収乏しく

 「復興需要は衰えない。町を一つ造っていますから」。津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。山を切り崩して造成した高台で、大手ゼネコン清水建設などでつくる共同企業体(JV)の渉外担当、佐々木信孝さん(66)が語った。

 津波被災地は、暮らし再建に不可欠な公共事業が莫大にある一方、自治体の税収は乏しい。このため国は補助金の配分などで手厚く支援する。財政規模は膨らみ、岩手県大槌町の2017年度当初の一般会計は約550億円と、震災前の約10倍。宮城県女川町は約9倍の約520億円だ。

 公共事業は本来、国と自治体がお金を出し合って実施するが、11~15年度は特例的に被災自治体の負担をゼロにした。16年度からは自治体も一部負担する仕組みに改められたものの、被災地への配慮で影響は最小限に。予算規模1兆円超の宮城県の負担額は、17年度で20億円程度だ。

 同県は震災前から、内陸部で24キロの道路を整備していた。陳情を繰り返してもなかなか国の補助金は出なかったが、震災後に状況は一変。復興に必要な事業だとして、国が費用を全額負担したことで20年度までに大部分が開通する見通しとなった。

 大型事業で各地が沸き立つ現状に、地域経済の先行きを危ぶむ声も上がる。建設関係者は「10年先を予定していた工事も前倒しで消化している」と口をそろえる。国土交通省幹部は「防潮堤の整備が終われば、建設業者の仕事は減るだろう」と予測する。

 被災自治体の危機感が特に強いのは災害公営住宅だ。津波で自宅を失った被災者があまりにも多く、岩手、宮城、福島3県で計約3万戸を整備。いずれ多額の維持管理費が発生する。全世帯の8分の1に相当する約700世帯分を建てる大槌町は「自力で管理できるだろうか」と頭を抱える。

公営住宅空室多発も

 単身の高齢入居者が多く、今後は住人が亡くなるなどして空室が各地で多発する見通し。都市部では、家賃が安い公営住宅に空室があれば入居希望者が殺到するが、被災地は人口流出が進む。空室が埋まらず、維持管理費の原資の家賃収入が確保できない恐れがある。

 さらには、大量の建物の完成時期がほぼ同じため、大規模改修も同時期に押し寄せる。阪神大震災から約5年後に公営住宅の統廃合計画をまとめた神戸市は「長期的な視点での管理が不可欠」と警鐘を鳴らす。国の手厚い財政支援は20年度までの予定。一方、道路や防潮堤なども含めた維持管理費は将来にわたって必要となる。「いきなり支援を打ち切り、震災前に戻すとは言えない」と総務省幹部。21年度以降の国の支援は、19年度ごろ議論される見通しだ。