他電力を巻き込む東電の新再建計画 賠償金、廃炉費…「福島」費用に二の足か

 

 東京電力ホールディングス(HD)が22日発表した新たな経営再建計画は、昨年末に経済産業省の有識者委員会がまとめた提言を忠実になぞった内容になった。だが、膨れ上がった福島第1原発の事故処理費用をまかなうには、他の大手電力との共同事業体などによる収益力の向上が不可欠だ。しかし、他電力は慎重姿勢を崩しておらず、再建には国や原子力損害賠償・廃炉等支援機構の一層の支援が必要だ。

 「おおむね委員会の提言に沿う内容だ。今後、どう具体化するのか、東電の努力を期待したい」。経産省幹部は骨子の内容をこう評価する。

 改革実現のカギを握るのは他電力との提携だ。原子力と送配電の両事業で共同事業体を作り大幅なコスト削減を図るとともに、競争力を高めて海外展開に結び付ける計画を掲げる。ただ、他電力は東電との協業で収益が廃炉や賠償費用に充当される恐れがあると警戒する。

 このため、新たな再建計画では国の関与の在り方や費用負担について一定のルールを設けると明記。提携相手の不安解消に必死だ。それでも提携が進まない場合、国が調整に乗り出すことになる。各社の幹部が参加する“円卓会議”を設ける構想も浮上する。

 原賠機構連絡調整室の西山圭太室長(東電HD執行役)は22日の記者会見で、東電の提携交渉について、「潜在的パートナーがどういう条件なら受け入れ可能か、今秋にも協議したい」と意欲を示した。

 約22兆円と見込まれる原発事故の廃炉や賠償費用を確保するため、東電は30~40年にわたり年5000億円の資金を捻出する。除染費用4兆円は国が過半数を保有する東電HD株の売却益を充てる計画で、企業価値を1株当たり1500円程度と現在の4倍弱まで向上させなければならない。東電は4月にもまとめる計画全体で、より具体的な収益源を示す必要がある。(高木克聡)