シェアバイクに未来はあるか ノンフィクション作家・青樹明子

専欄

 長い冬が終わり、中国にも春がやって来た。外出の機会が増えるなか、北京などの都市で目に付くのは白や黄、青や橙色などの自転車だ。今最もホットとされるシェアバイクである。

 使い方は簡単だ。まずは実名で登録し、電子マネー経由で、専用アプリにチャージする。車体に貼られた2次元コードを読み込むとロックが解除されるので、そのまま使用すればいい。使い終わったら任意の場所に停めておけば回収してくれる。料金も1時間につき1元(約16円)と安価である。

 数年来、中国都市部の交通渋滞は異常なほどの様相を呈している。幹線道路は“駐車場”と化し、流しのタクシーは拾えない。地下鉄もラッシュ時になると、改札にたどり着くまで小一時間かかることもある。

 --こんなことなら、自転車の時代のほうがよかった…。

 と人々が思い始めたころにシェアバイクは登場した。2016年末の時点で、その台数は1886万台だったが、17年末には5000万台を超えるだろうと予測されている。大手のofoは「3カ月で218%成長を実現させる」と豪語していて、今年は1000万台を新たに投入する。サービスを提供する範囲も、国内100の都市に及ぶようだ。

 まさに発展中国を象徴するような急成長ぶりだが、問題はそう簡単ではない。

 まずは使用者のモラルである。レンタルの基本は、元の状態で返却することだが、未返却の例が後を絶たない。私物化してしまうわけだが、ペンキで色を塗り直し、鍵を付け替えて、子供用の椅子を取り付ける。これでは盗みだ。

 放置方法にも問題がある。公園の門の前に山積みされたシェアバイクは、まるで粗大ごみ収集場所のようだ。地下鉄の入り口近辺には使用後の車両が散乱し、歩行者が通行できない有り様である。途中で知り合いの車に遭遇したのだろうか、幹線道路の真ん中に放置された例もあり、交通の妨げとなっている。

 中国メディアは、シェアバイクの発展には3つの部門の協力が欠かせないと提言する。使用者、運営する企業、行政などの管理部門である。使用者のモラル向上は言うまでもないが、行政と企業が連携して、違反者への罰則も含めて、管理を強化させる必要もある。

 自転車シェアの成功で、今後は車やモーターバイクなどのシェアも必ず登場するだろう。

 シェア経済は“道徳経済”の側面も併せ持つ。中国だけの問題ではない。シェアという新概念は、世界規模で、現代人の民度が試されている。