「ろうそく集会」でノーベル平和賞狙う韓国 背景に自然・科学分野『0-22』の焦り

 
韓国・ソウル中心部で開かれた朴槿恵大統領の即時退陣を要求する集会で、ろうそくを持って大統領府へ向かう人波=昨年12月10日(長時間露光、共同)

 そこまでして韓国はノーベル賞がほしいのかと言いたくなる。朴槿恵(パク・クネ)氏に対する大統領罷免を求めて昨年10月からソウルで行われてきた「ろうそく集会」について、ソウル市がノーベル平和賞の推薦と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(記憶遺産)の登録を推進するというのだ。確かにこの国は自然・科学分野でノーベル賞をまだ取っていないことに焦っている。対日本で『0-22』というスコアも背景にあるにちがいない。だが平和賞は、賛否はともかく2000年に金大中(キム・デジュン)元大統領が受賞している。やはりノーベル賞だったら何でもいいか。

 平和裡に政権を打倒したから?

 韓国憲法裁判所が3月10日、国会が弾劾訴追した朴槿恵大統領を罷免する決定を言い渡し、朴氏は失職した。聯合ニュース(日本語電子版)など韓国メディアは、これを受けてソウルなどでは、ろうそくを手に朴氏の退陣を求める集会などに参加してきた市民団体などは「ろうそく市民が勝利した」と歓喜の声を上げたと報じた。

 そして韓国は、この「ろうそく」でノーベル賞を目指すというのだ。韓国紙、中央日報(日本語電子版)によれば、ソウル市が、昨年10月から4カ月以上に渡って行われてきたろうそく集会に関し、ノーベル平和賞の推薦と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(記憶遺産)の登録を推進するという。

 同市は3月19日、市レベルの「ノーベル平和賞推薦タスクフォース(TF)」を稼働し、来月「市民推薦推進団」を構成して来年1月にノーベル委員会に推薦書を提出する計画だとしている。

 中央日報の記事をそのまま引用すると、「ソウル市はろうそく集会が平和な集会方法の例を示した点を上げ、ノーベル平和賞の理由になるとみている。▼民主主義および平和、憲政秩序の維持などの国民的世論を表した点▼平和な集会方法の先例を提示して民主主義の模範事例として機能した点▼世界的に類を見ないほど多くの人が参加した点-などを重点的に表明する予定だ」という。

 立派は立派だ。ただ果たして、朴前大統領の友人で女性実業家の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件に端を発したスキャンダルをめぐって、「ろうそく集会」で平和裡に政権を打倒したからといってノーベル賞が贈られるかは甚だ疑問だ。

 対日本『0-22』の焦り

 韓国はここ数年、自然科学分野でのノーベル賞受賞をめざし積極的に投資してきたはずだ。焦りもあるだろう。だからといって、平和賞でも「御の字」というのは筋違いの感がある。

 毎年10月になると韓国メディアは、自然科学分野のノーベル賞受賞者ゼロをめぐる原因分析、政府などに対する責任追及に余念がない。さらに昨年は英科学誌ネイチャーが、韓国でこの分野の受賞者が出ない背景を特集記事で分析、研究開発について国内総生産(GDP)比で世界最大級の投資を行う政府に「(ノーベル賞を目指すならば)カネより大事なものがある」と批判したほどである。

 日本の存在も韓国の焦りを助長している。昨年も韓国人の受賞者はなく、大隅良典・東京工業大学栄誉教授が医学・生理学賞に選ばれたため、対日本では『0-22』と差が広がった。

 こうした状況を変えるのは容易ではない。韓国の社会風土にも問題がありそうだ。ネイチャー誌は、議論を避け、上下関係を重んじる韓国の風土がクリエーティブな研究を阻む要因だと批判し、こうした風土が優れた科学者の海外流出につながっていると分析していた。

 かわいそうな面もある。韓国紙、朝鮮日報は昨年10月、「韓国唯一のノーベル賞が平和賞なのは偶然ではない」と題した論説主幹の楊相勲(ヤン・サンフン)氏のコラムを掲載。それによれば、韓国では韓国人が受賞しなかった場合、「日本にはできるのに韓国はなぜできない」といった論議が盛んになると指摘。つまり韓国の世論は、日本がやることは韓国も当然やることができ、成さなければならないと言わんばかりだというのだ。

 だからといって自然・科学分野を棚上げし、まずは“政治力”で平和賞を取るという考えには違和感を覚える。