厨房カメラで調理風景公開 上海で2000飲食店 客の不信感払拭

 
上海市の飲食店の入り口で、厨房内の様子を映した画面を見る女性従業員(共同)

 中国の衛生当局が、飲食店の厨房(ちゅうぼう)内にカメラを取り付け、調理の様子を店頭のスクリーンで映して「安全性」をアピールする取り組みを進めている。中国では食の安全を揺るがす事件が相次いでおり、客の不信感を払拭するのが狙いだ。

 上海市の商業施設「凱徳龍之夢虹口」では、数十の飲食店が厨房内にカメラを設置。各店舗の入り口にある縦約30センチ、横約40センチのスクリーンには調理師らが肉や野菜を包丁で切る様子が映され、食材の仕入れ先や生産時期も検索できる。

 専用のアプリを使えば、スマートフォン上でも映像を視聴でき、中国で盛んな弁当デリバリーで店を選ぶ際の参考としても使える。

 カメラ設置の取り組みは、国家食品薬品監督管理総局の主導で2014年から始まった厨房内の作業の透明化を進める動きの一環。中国メディアによると、上海市では現在、約2000軒の飲食店が参加しているという。

 当局が乗り出した背景には、食品業界の衛生管理意識の低さがある。使用期限切れの食肉を使った加工品を販売したり、飲食店で下水などにたまった油を抽出した「地溝油」を使ったりするケースが後を絶たず、公安省によると、15年に取り締まった食品の安全に関する犯罪件数は1万5000に上る。

 凱徳龍之夢虹口内にある日本料理店の男性従業員は「常に客に見られていると意識して、厨房を清潔に保つよう同僚と声を掛け合うようになった」と話す。一方、消費者の不信感を拭い去るのは簡単ではないようで、火鍋料理店前で並んでいた男性会社員(22)は「映像を店側が編集している可能性もある」と指摘した。(上海 共同)