ASEAN10カ国経済相あす会合 RCEP合意、共闘を模索

 
ASEAN加盟の経済相の表敬を受け、挨拶する安倍晋三首相(中央)=6日午後、首相官邸

 政府は8日、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国との経済相会合を大阪市で開く。中国なども参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉で質の高い貿易・投資ルールの早期合意を目指し協力することを確認する見通し。ただ、6日からの米中首脳会談では貿易不均衡の是正をめぐり厳しいやりとりが予想され、米国と協調する日本は対中通商交渉で硬軟両面の対応が求められる。

 「世界では保護主義の動きも出ているが、個人的な信頼関係に基づいて緊密に情報交換し、アジアの自由貿易を守る仲間として今後も共に活動していきたい」

 世耕弘成経済産業相は6日夜、東京都内で開かれた歓迎夕食会で呼びかけた。

 ASEAN10カ国の経済相は日本が呼びかけた「ASEAN経済相ロードショー」に参加するため来日。8日開催の日ASEAN特別経済相会合に加え、経済団体との会合や日本の先端技術を紹介するイベントなどを通じて日本とASEANの関係強化を図る。

 焦点となるのがRCEPでの共闘関係の構築だ。交渉では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の合意を踏まえ知的財産や電子商取引といった貿易ルールでもレベルの高い合意を目指す日本などの先進国と、緩やかな自由化にとどめたい中国やインドなどとの間で綱引きが行われている。

 このため、日本はRCEPの“提唱者”として強い発言力を持つASEANを自陣に引き込みたい考え。ロードショー期間中、イノベーション(技術革新)の強化などに向けた経済協力を併せて提案する方向だ。RCEPが実現すれば世界人口の約半分をカバーする巨大経済圏が生まれる。TPPを離脱した米国の焦りを誘い協定に引き戻すきっかけになる期待もある。

 世耕経産相は6日、TPPに参加するベトナムのチャン・トゥアン・アイン商工相や、シンガポールのコー・ポークン国務相と個別に会談。TPP実現に向けRCEPを早期に合意する重要性などを協議した。

 ただ、RCEPでは域内最大の経済規模を持つ中国が合意形成のカギを握る。日本は協定が中国主導にならないよう警戒しつつ、歩み寄らざるを得ない。

 一方、トランプ米大統領は米中首脳会談で中国に対し巨額の対米貿易黒字の削減を迫る見込み。米国と緊密に連携する日本も今後、「共同戦線を張る場面が増える」(政府筋)とみられ、対中交渉でしたたかなかじ取りを迫られそうだ。(田辺裕晶)