「拉致されて姿がない40年 希望持って闘っています」横田滋さん、早紀江さん
めぐみへの手紙めぐみちゃん、こんにちは。今年も春がめぐってきました。卒業式、そして入学式の季節です。お父さんは40年前の春、中学校の学生服を着ためぐみちゃんを桜の木の下で撮りました。特別にきれいな桜。体調を崩して入学式を欠席した後でした。ようやく治りかけのめぐみちゃんが「こんな顔じゃ嫌だよ。恥ずかしい」と嫌がるのを連れ出しましたね。私たちにとって大切な写真です。その年の冬、めぐみちゃんはいなくなりました。
お母さんは寂しさが募り、それを振り払いながら一生懸命、救出運動を頑張っていますよ。めぐみちゃんが拉致され、どれだけ季節がめぐっても、姿がない40年が過ぎようとしています。どうにか希望を持って、闘っています。
何の前触れもなく姿を消しためぐみちゃんが北朝鮮にいることを知ったのは、20年もたった平成9年でした。「生きていたんだ!」と信じられない気持ちで、皆で大喜びしました。そして同じ年、他の拉致被害者の家族とともに家族会を結成しました。
「横田めぐみの父、滋」「母、早紀江」というたすきをかけて、新潟で初めて街頭に立って、めぐみちゃん達、拉致被害者の救出を呼びかけました。最初は事実を信じてもらえず「拉致疑惑」という言葉でしか報道されませんでした。
それでも、国家犯罪によって大切な子供たちが拉致されている事実があることを、皆で必死に訴えました。その思いが伝わり、全国の方が応援してくださるようになりました。
家族会の呼びかけに1千万人以上が署名をしてくださいました。日本だけでなく、アメリカの大統領や議員にお会いしたり、国連で訴えたり。とてつもない日々でした。「私たちの人生は一体何なのだろう」。そう思うこともあります。めぐみちゃんを取り戻すことだけが願いでした。
最初は国がすぐにでも立ち上がり、解決してくれると信じていました。でも、これだけの年月を要してなお、めぐみちゃんの姿が見えません。一生懸命やってくださる方たちは確かにいて、色々なことがわかりました。国民の皆さんが怒り、報道も取り上げてくださいます。
でも結局、私たちは親であり庶民です。普通の日本の父親と母親。それが家族会なんです。日本中、本当に色々なところへ行き、思いを訴えました。多くの国民の皆様の後押しがなければ何もできませんでした。どの方も皆、純粋で有り難い方たちばかりです。
救出活動を始めてから総理大臣は十数人も変わりました。拉致問題担当大臣も数年ごとに変わります。難しい政治や国際関係はよく分かりません。だから、そのたびに「どうにか解決してください」と必死にお願いしてきました。
ひとたび、北朝鮮で事が起こり、暴走が始まればすべての日本人が一瞬で消えてしまうかもしれません。
そのとき、国民を守れるのか。拉致被害者を救えるのか。国家の危機がすぐそこにあるのに、政治は真剣に考えているでしょうか。本当に国を思い、国民を思い、北朝鮮に拉致された子供たちを思っているのでしょうか。
国会を見ていても、「もっと重要な問題があるのに…」とひどく悲しくなることがあります。重要な問題をあえて議論しないような動きがあるようにも感じます。今、日本にとって本当に大切な事柄を議論してほしいと心から願います。
最近、政治家の皆さんにこう話します。「拉致された人たちは親兄弟に見捨てられたと思っているかもしれません。日本国にも見捨てられたと思っているのではありませんか」と。
一つ間違えば殺されてしまう国で「助けて」と声をあげることもできず、黙って救いを待つ子供たちがいる。お父さんとお母さんは、日本の国として一刻も早く、救いの手を差し伸べてほしいと強く思っています。
悲しい出来事はたくさんありました。めぐみちゃんの事件が初めて実名で報じられたとき。平成14年に北朝鮮が「死亡」と伝えてきたとき。めぐみちゃんの偽の遺骨が来たときもありました。すべて「命」の問題です。北朝鮮は恐ろしい国です。何があってもおかしくない。恐怖で何日も眠れないことが続きました。
毎日、めぐみちゃんを思い、祈ります。どれだけ離れていても私たちは青い空で繋(つな)がっています。夜、お月様や星を眺めながら、めぐみちゃんも見ているかな、と思います。文字通り、祈るような思いなのですが。家の中を見回しても、道を歩いていても、あちらこちらにめぐみちゃんの足跡を感じます。お花をたくさん摘んできてくれたり、お気に入りの本のことを話してくれたりしました。小さな出来事の一つ一つが思い出され、辛(つら)くなります。
お母さんはこの間、めぐみちゃんがよくいたずらしていたおひな様を出して、お花と一緒に飾りました。とてもすてきで、全てが懐かしく思い出されます。
お父さんは84歳。お母さんは81歳になってしまいました。よく今日まで生きてこれたと思います。どうか諦めないで。元気で頑張って。めぐみちゃん、必ず日本に帰って、新しい写真をたくさん撮ろうね。
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国民の皆様、横田めぐみの父、滋と母、早紀江です。いつもご支援ありがとうございます。私たち拉致被害者の家族はだんだん年を取り、体力も弱りました。講演など救出活動の最前線に立つのは難しくなりました。それでもあらゆる方法で被害者救出を訴えたいと願っています。今回、私たちは娘への思いを手紙にしたためることにしました。すべての拉致被害者が家族の元へ帰ることを信じて最後まで闘って参ります。今後も応援していただけますようお願いします。
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