侮れない「モノマネ大国」 中国、強固な製造業へ着実に進歩

高論卓説

 訪日中国人旅行客が日本で買い物をする際に、偽物を買わされる心配がほとんどないというのが、彼らにとって日本旅行の魅力の一つでもあるようだ。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、世界で流通している偽ブランド商品の6割が中国で製造されている。

 中国ではATM(現金自動預払機)からも偽札が出るといわれるくらいで、偽物をつかまされないよう常に神経を張り詰めていなければならない。そのため本来楽しいはずの買い物で疲れてしまうことが多い。

 中国では消費者を保護するために「消費者権益保護法」が制定されている。この法律では「事業者の立証責任」を重くするなど、消費者保護の観点から制度が設けられているのだが、これを逆手に取って偽物販売業者を脅して金を奪う「ニセモノバスター」が現われるなど、消費者保護による「弊害」も生じている。

 偽物ブランドとまでいかなくても、オリジナルを模倣・改造したものが多いのも中国の特徴だ。ただ単に「モノマネ」と侮れないものも増えている。高速鉄道もその一つではないだろうか。

 中国の高速鉄道は、フランス、ドイツ、カナダ、日本からの技術を導入し、それをベースに改良を重ね、2008年に北京-天津間が開業した。11年7月に沿岸部の浙江省温州市で、鉄道衝突脱線事故が発生し、死者40人、負傷者約200人という大事故を起こしたのも記憶に新しい。

 当時、安全を軽視して運転再開が優先されたといわれたが、その後、大きな事故は発生していない。高速鉄道は既に総延長が2万キロに達し、16年だけでも1900キロが建設された。さらに25年までに1万5000キロを増設する計画で、35年に4万5000キロへ拡張する構想まで浮かんでいる。

 日本の新幹線は、開業50年余りで総キロ数が約3000キロ。国土の広さが違うとはいえ、中国の高速鉄道の普及は驚異的なスピードといえよう。最高速度は現在、時速300キロに落としているが、事故前までは350キロで営業運転を行っていた。ただのモノマネでは、ここまでの普及はできないだろう。

 世界知的所有権機関(WIPO)の統計によると、16年のPCT国際出願特許数の国別の数字は、第1位が5万6595件の米国(前年5万7385件)、第2位が4万5239件の日本(4万4235件)、第3位が4万3168件の中国(2万9846件)の順になっている。中国は13年にドイツを抜いて3位となったが、その後も出願特許数を順調に伸ばしており、この1年で2位の日本に肉薄している。

 さらに16年の企業別国際特許出願件数をみると、1位ZTE(中国)、2位ファーウェイ(同)、3位クアルコム(米国)、4位三菱電機(日本)、5位LG(韓国)の順。トップ10では8位に中国の大手液晶パネルメーカーの京東方科技集団(BOE)が入り、国別だと中国3社、米国3社、日本2社、韓国2社となっている。

 15年5月に中国政府は「中国製造2025(メード・イン・チャイナ2025)」という今後10年間の製造業発展のロードマップ(行程表)を発表している。確かに、モノマネ大国という面もあるが、製造強国に向けて着実に進歩を続けているのは間違いなさそうだ。

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【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年から遼寧中旭智業有限公司、旭リサーチセンター主幹研究員。58歳。大阪府出身。