日露首脳会談 協力覚書100件超、領土問題置き去りに批判も

 
ロシアのプーチン大統領(中央右)と会談する安倍晋三首相(同左)=27日、モスクワ(AP)

 日露両政府は27日の首脳会談に合わせ、官民で20件以上の経済協力で合意する。都市開発や医療など生活に身近な事業に取り組んでロシア人の対日感情を好転させ、北方領土問題の前進に向けた交渉環境を整える。ただ、シリア情勢をめぐり米露関係が冷え込む中、日本企業の反応は鈍く、領土交渉の停滞を踏まえて慎重な対応を求める声もある。

 昨年12月の首脳会談でも80件の協力覚書を交わしており、今回の追加実施で案件は100件を超す。

 覚書ではロシア南西部ボロネジでIT技術で制御した信号機を導入して交通渋滞の緩和を図る事業や、遮熱性がある建材を使った省エネ住宅の普及を進める。

 また、医療分野では、三井物産がロシア製薬大手アールファームと資本業務提携で合意。アールファームはがんや感染症向け医薬品に強みを持ち、三井物産が参画することで医薬品の品ぞろえを強化するほか、周辺国への販路開拓も図る。

 日露の経済協力は従来、石油や天然ガスなどエネルギー分野が中心だったが、現在はロシア人の生活の質向上や資源収入に頼る産業の多角化に向けて、日本の協力に期待が高まっている。

 オレシキン経済発展相は3月に来日した際、「日本の対露投資は“冬”のような状態だ。経済協力の履行が投資促進につながると期待している」と述べ、事業の具体化を強く求めた。

 日本側も今回、協力事業の作業プランを改訂するなど進展をアピール。ただ、トランプ政権のシリア攻撃で米露関係が悪化しており、米国を刺激しないため「いまはロシア案件で目立ちたくない」(商社幹部)と慎重な声もある。

 そもそも領土問題を置き去りにして経済協力を進めることに国内では強い反発がある。協力案件がさらに先走れば「盗人に追い銭」と批判を受けかねない。(田辺裕晶)