保護主義対抗で異例の声明 政府とWTO、協調確認 米政権を牽制

 
講演するWTOのアゼベド事務局長=22日午前、東京都港区

 政府と世界貿易機関(WTO)は22日、保護主義への対抗と自由貿易推進で協調することを盛り込んだ共同声明を発表した。政府が国際機関と個別に声明を出すのは異例。21日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合が反保護主義を強く打ち出せなかったことへの危機感が背景にある。声明はWTOの重要性も明記し、多国間の貿易協定に否定的なトランプ米政権を牽制(けんせい)した。

 12月のWTO閣僚会議に向け、緊密に連携することも確認した。

 声明は「自由で公正なルールに基づく貿易は、経済成長や持続可能な開発の主要な原動力である」と指摘。経済発展には開かれた市場の維持が重要で「保護主義は解決策にならない」とした。またグローバル化が所得格差につながるとの懸念に応えるため、経済的な弱者に配慮した「包摂的な経済」の実現を訴えた。

 さらにWTOは国際的な自由貿易体制で中核の役割を果たし、世界経済の繁栄を支えてきたと強調。WTO体制を補完する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)などの早期発効・妥結が重要とも指摘した。

 WTOの閣僚会議は12月にアルゼンチンで開催される。2015年12月のケニアでの閣僚会議では、新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の方向性を示せなかった。

 来日中のWTOのアゼベド事務局長は22日、日本の関係閣僚と相次いで会談。岸田文雄外相は「自由貿易こそ成長の源泉。WTOの役割はますます重要になっている」と呼び掛けた。アゼベド氏は「日本は常に貿易交渉でリーダーシップを発揮しており、これからも期待したい」と応じた。

 アゼベド氏は会談に先立って東京都内で講演し、保護主義的な政策を進めるトランプ政権と議論を続けていく考えを示した。世界的に反グローバル化が広がっていることに対しては「多国間貿易の広がりが各地で失業を生んでいるというのは誤解だ」と強調した。