新産業構造ビジョン、新しい日本の産業の姿示す 技術革新へ匠の技のデータ化も

 

 新産業構造ビジョンは、4分野で平成42年に目指す数値目標を示し、新しい日本の産業の姿を示した。人口減少が進む中、日本が国際競争力を維持するためには、技術革新による生産性の向上が欠かせない。ただ、日本は第4次産業革命に欠かせない人工知能(AI)の開発やビッグデータの分析で、米国やドイツに後れをとった。日本が競争力を持つとされる製造業や医療の現場で、独自の付加価値をデータ化し、活用を急ぐ必要がある。

 例えばビジョンでは「製造」に関連し、熟練工が持つ“匠(たくみ)の技”など各社の技術をデータ化し、工場や企業の枠を超えて共有することで、42年までに労働生産性を2%上げるとの工程表を示した。こうした技術やノウハウを知財と位置づけ、自由な流通と保護すべき領域を明確にするためには、不正競争防止法や特許法などの見直しが必要だ。

 経済産業省は、日本の産業が目指すべき将来像として「コネクテッド・インダストリーズ(つながる産業)」を提示した。トヨタ自動車の「カイゼン」に代表される日本の現場力を、AIやビッグデータなどと融合し、モノ作りを中心に国内産業の次世代化を進める戦略だ。

 このため経産省は企業の再編を促す産業競争力強化法で「事業の入れ替え」を新たに支援対象に追加する方針を掲げた。29日には経産省が音頭を取り、製造業大手やAIベンチャーなど、コネクテッド・インダストリーズの“担い手”となる企業の懇談会を設立した。官民で必要な政策の洗い出しを行う構えだ。

 少子高齢化や地方経済の疲弊、エネルギーや食糧問題など、日本社会が抱える課題は多い。解決には省庁の枠にとらわれない法規制の改革が不可欠なだけに、旗振り役の経産省は調整力が問われる。(高木克聡)